営業を使った新規事業テストマーケティングの本質

新規事業のテストマーケでよくある失敗は、「意見をもらいに行く」設計になってしまうことです。丁寧に見えますが、実務としては本音が取り切れないことが多いです。とくに既存顧客や関係性の近い相手に聞くと、相手は悪く言いにくくなりますし、角が立たないコメントになりやすいです。

私が一番大事だと思っているのは、“意見を聞きに行く”のではなく、“本気で売りに行く”スタンスで検証することです。

売る前提で話をすると、相手は初めて「社内で通るか」「予算が出るか」「今やる理由があるか」「導入リスクは何か」という購入判断の本音を出します。テストマーケで欲しいのは、まさにこの領域の情報です。

1. 顧客の本音が分かるのは「売りに行った瞬間」です

顧客の本音が出る条件はシンプルで、相手の頭が**“雑談”から“意思決定”**に切り替わったときです。 そのスイッチは、次のどれかに入った瞬間に入ります。

 

  • 価格や契約条件を出したとき
  • 導入時期(いつから)を詰めたとき
  • 稟議の話(誰が決めるか/誰が反対するか)に入ったとき
  • 競合・代替案との比較になったとき
  • 現場運用の負担(誰がやるのか/何が増えるのか)を突いたとき

 

逆に、「どう思いますか?」「ご意見ください?」は、相手に“責任のないコメント”を許します。だから本音が取り切れません。

テストマーケの目的が「本音の取得」なら、会話の設計は最初から“購入判断”に寄せるべきです。

2. 「本気で売りに行くテストマーケ」の進め方(最短ルート)

ステップA:未顧客を中心に当てます

既存顧客は優しいです。だから検証が歪むことがあります。

未顧客(もしくは関係性が薄い見込み顧客)に当てて、ちゃんと断られに行くほうが情報は濃いです。ここで取れる断り方や本音が、あとで効いてきます。

ステップB:最初から“買う前提の会話”に入ります

必要なのはプロダクト説明ではありません。購入判断に必要な材料を揃えることです。

 

  • 価格レンジ(仮でも出します)
  • 提供形態(PoC/トライアル/本契約)
  • 導入までのリードタイム
  • MVPの範囲(できること/できないこと)
  • 最初の導入ステップ(何が揃えば開始できるか)

 

ここまで出して初めて、相手は「社内で通るか」を語り始めます。本音はここから出ます。

ステップC:「内諾」を取りに行きます

「売れそう」ではなく、**“やると言わせる(内諾を取る)”**を取りに行きます。

内諾が取れない状態で開発に突っ込むと、あとで“作ったけど売れない”が起きます。逆に言えば、内諾が取れるなら勝ち筋が見えています。

3. NG理由は「営業要因」と「プロダクト要因」に切り分けます

テストマーケで一番危険なのは、NGを全部「プロダクトがダメ」に寄せることです。

私は、プロダクトコンセプトとコア機能が間違っていなければ、大半は営業でなんとかできる世界線だと思っています。だからこそ、NG理由は必ず切り分けます。

営業要因の典型(=直せるやつ)

 

  • ターゲットがズレています(今その課題がない層に当てています)
  • 温度感の読み違いがあります(優先度が低いのに重く売っています)
  • 価値の言い方が抽象的です(“便利です”止まりです)
  • 稟議ルートを踏めていません(決裁者・関係者が違います)
  • 価格の置き方が悪いです(費目・予算枠に刺さっていません)

 

→ これは「営業の設計」と「打ち手」で改善できます。

プロダクト要因の典型(=直さないと無理なやつ)

 

  • そもそもコンセプトが“お金が出ない課題”でした
  • コア機能が欠けていて業務が成立しません
  • セキュリティ・連携・運用要件が必須なのに満たせません

 

→ ここはプロダクト側の意思決定が必要です。

切り分けの実務ルール(迷ったらこれです)

 

  • 同条件で営業だけ変えると動く → 営業要因の可能性が高いです
  • 何社当てても“同じ機能不足”で止まる → プロダクト要因の可能性が高いです
  • 「欲しいけど社内で通らない」が多い → 多くは営業要因です(稟議設計・資料・提案順)
  • 「現場が回らない」が多い → プロダクト要因の可能性が上がります(コア機能・運用)

 

この切り分けができると、次に何を直すべきかが明確になります。

4. プロダクトはMVPを決め、機能要望を“貯金”していきます

プロダクト側は、まずMVPを決めます。MVPは「最低限お金を払ってもらえるライン」です。

その後、要望機能を優先順位付きで貯めていきます。ここで重要なのが、要望機能を一括りにしないことです。

私はロードマップを、営業的には2種類に分けて考えるべきだと思っています。

A:営業上必要な武器(導入障壁を外す)

 

  • 稟議を通すための必須要件(セキュリティ、監査、権限管理など)
  • 現場導入の必須要件(連携、運用負荷、移行)
  • 競合比較で負けるボトルネック(比較軸の穴)

 

→ これは「売るために必要」なので優先度が上がります。

B:導入後に喜ばれる武器(継続・満足・アップセル)

 

  • 使い勝手の改善
  • 可視化・レポート・自動化
  • 周辺業務まで広げる追加価値

 

→ これは「長期で強くなる」領域です。

さらに営業上は、ロードマップの“見せ方”が重要です。

「入れます」連発は信用を落とします。少なくとも確定/検討中/要望が多いの3段階で見せると、約束が破綻しにくくなります。

まとめ:営業テストマーケは「本音の取得」と「原因の分解」がすべてです

  • 意見をもらいに行くのではなく、本気で売りに行く
  • そこで出てくるNGを、営業要因/プロダクト要因で切り分ける
  • プロダクトはMVPを決め、機能要望を貯め、ロードマップを
    ・営業上必要な武器
    ・導入後に喜ばれる武器
    に分けて持つ

この3点が揃うと、新規事業のテストマーケは「ふわっとした検証」から「勝ち筋を作る検証」に変わります。

このような状況でしたら、
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