技術の分かる営業がいないときの製造業への営業方法|メーカーに売る営業担当へ

技術の分かる営業がいないときの製造業への営業方法

この記事でわかること

  • 技術の分かる営業がいなくても、製造業への電話で困らない理由と、先に覚えておくべきこと
  • 電話で聞いてよいことと持ち帰ることの線、答えられない質問への返し方
  • 「もう仕組みがある」と言われたときに、その中身を分けて返すやり方

このコラムは、次のような方に向けて書いています。

「メーカーの技術者に電話すると、専門的な質問をされて答えに詰まってしまいます」
「社内に技術の分かる営業が1人しかいなくて、その人の手が空くまで商談が組めません」
「工場に電話すると、ほとんど『もう仕組みは入っているので』と言われて終わります」

製造業に売る会社では、「技術の分かる営業がいない」という悩みがとてもよく聞かれます。メーカーの技術者や工場の担当者は、自分の仕事に詳しい相手です。少しでも的外れなことを言えば、すぐに見抜かれます。

けれども、電話の段階で技術の知識が足りずに失敗する会社の多くは、知識が足りないことより、知識で勝とうとしたことでつまずいています。この記事は、メーカー・工場に物やサービスを売る会社の営業担当・責任者に向けて、技術の分かる人が少ないチームで、どこまで電話で聞き、どこから持ち帰るか、そして「もう仕組みがある」にどう返すかをまとめます。

前提:電話で技術に勝つ必要はない

最初に押さえておきたいのは、電話の目的は商談の約束を取ることで、技術の説明で相手を納得させることではない、ということです。電話の相手はまだ強い関心を持っていません。関心を引き出すのは、商談の仕事です。

ところが、技術に詳しくない人ほど、詳しく見せようとして電話で説明を重ねがちです。これには3つの落とし穴があります。

商材の知識で勝負する

相手は毎日その仕事をしている人。知識の比べ合いになれば、まず勝てない

その場で言い負かされる

勢いで答えてしまう

濃い質問に、その場の勢いで「できます」と答える。商談で違っていたと分かる

商談の場で信用を失う

電話で話し切ってしまう

困りごとを電話で深く聞き、答えまで話してしまう。相手は会う理由が無くなる

アポにする意味が無くなる

3つとも、電話で技術の話をしすぎたことから起きています。反対に言えば、技術で戦わない台本にしておけば、技術の分かる人がいなくても電話は回ります。料金や細かい仕様を聞かれたら、「私はお電話でのご案内の担当でして、詳しくは担当の者からご説明します」と返して構いません。それは逃げではなく、正確に答えるための約束です。

POINT

技術の分かる営業がいないことは、電話の段階では大きな弱みになりません。弱みになるのは、分からないのに分かったふりをしたときです。

技術の前に「業界の仕組み」と「相手の言葉」を覚える

技術の細かい中身より先に覚えておくべきなのは、業界の仕組み、つまり「その仕事を誰がしているか」です。これが分かると、受付で呼ぶ相手と最初の一言が変わります。

たとえば、法律で決められた書類や安全の情報を扱う仕組みを売る場合を考えます。同じ製造業でも、その書類を「作る側」「受け取って渡す側」「受け取って使う側」で、担当している部署がまったく違います。

相手の立場 その仕事をしている人 受付での呼び方の例
作る側(材料・化学品のメーカー) 品質保証や、化学物質の管理を担当する部署 「品質保証や、化学物質の管理を見ている方」
渡す側(商社) 書類を扱うのは、実は営業担当の全員。決まった担当がいないことが多い 「法令に関わる書類の管理をご担当の方」
使う側(部品を作る工場) 品質保証部が無いことも多い。安全の決まりに沿った危険の見直しをしている安全の担当 「工場の安全や、危険の見直しを見ている方」

仕組みを知らないと、どの会社にも一律に「品質保証部のご担当者様を」と言ってしまい、品質保証部の無い工場や商社で止まります。逆に、誰がその仕事をしているかが分かれば、台本を暗記しなくても、言い方は自然に変わります。受付で相手の製品名を出して「御社では〇〇を作られていると思うのですが」と添えると、受付も「その話ならあの人」とイメージを持ってつないでくれます。

言葉も同じです。製品や部品は「ワーク」、良品率は「歩留まり」、加工機の設定は「条件出し」。外来語を避け、相手の世界の言葉で話すだけで、「分かっている側の人」として扱われます。材料や化学品の業界の仕組みは「化学・素材メーカーへの営業」で詳しく取り上げています。

電話で聞くのは「提案の入口に要る目安」まで

では、電話でどこまで聞けばよいのか。基準は、商談で提案の入口に立つために要る目安までです。技術の分かる人が商談に入ったときに、何を用意すればよいかが分かる。それ以上は聞かなくて構いません。

たとえば部品であれば、用途と、電圧・電流・大きさの目安が聞ければ、提案の入口には立てます。熱の出方や、壊れる条件のような一歩踏み込んだ話は、売る側の会社の中でも答えられる人が限られる領域です。そこは電話で扱わず、商談に回します。

電話で聞くこと・持ち帰ることの線

聞いてよいのは「目安」

用途(どの機器のどこに使うか)、大きさや量の目安、使い始めたい時期、決める方、今の調達先。答えを出すためではなく、商談の準備のために聞く。

持ち帰るのは「判断」

この条件で使えるか、ほかの製品と比べてどうか、いくらになるか。判断が要る質問には、その場で答えず、技術の分かる人から答えると約束する。

使う場面で難しさが変わる

医療・船舶・車載など、特別な品質の決まりがある用途は、同じ製品でも話が一段難しくなる。用途を聞いた時点で、技術の分かる人を入れる商談に切り替える。

聞くのは日程が決まってから

電話の途中であれこれ聞くと、尋問のようになり断られやすい。仕様の目安は、日程が決まったあとの「当日に向けた確認」として聞く。

最後の決めごとは、技術に詳しくない人ほど効きます。日程が決まったあとの確認なら、相手も「当日のために」と快く答えてくれます。アポのあとに2つ以上の項目を聞けたアポは、当日の取り消しが少ない、という傾向もあります。聞けた項目は、そのまま技術の分かる人への引き継ぎの材料になります。

答えられない質問は、持ち帰ると約束して日程に変える

それでも、電話で答えられない質問は必ず出ます。そのときにどう返すかで、アポになるか、信用を失うかが分かれます。

NG 知ったかぶりで答える

「たぶん大丈夫だと思います」と、その場の勢いで答える。商談で技術の分かる人が違う答えをすると、その時点で信用を失う

OK 持ち帰ると約束する

「大事な点なので、技術の者から正確にお答えします」と伝える。分からないことを分からないと言える相手の方が、製造業では信用される

NG 「分かりません」で終わる

答えられずに謝って、そのまま電話を終える。相手の質問は、関心があるからこそ出たものなのに、それを逃してしまう

OK 質問を日程の理由にする

「その点も含めて、技術の者が直接ご説明します。〇日か△日はいかがですか」と、答える場として商談の日程を出す

相手が詳しい質問をしてくるのは、関心がある証拠です。答えられない質問は、商談の約束を取る一番の理由になります。持ち帰ると約束した質問は、必ず記録に残して技術の分かる人に渡し、商談の冒頭で答えます。

答えられない質問のあとでも、最後は日程の打診まで言い切ります。こちらから引いてしまうのと、日程を出したうえで断られるのとでは、まったく違います。乗り気でなさそうに見えた相手が、日程を出してみるとあっさり受けてくれることは、よくあります。

答えられない質問が出たときの言い方の例

「ありがとうございます。とても大事な点ですので、私の推測でお答えするより、技術の者から正確にご説明させてください。その点も含めて30分ほどお時間をいただければと思うのですが、〇月〇日の〇時か、〇月〇日の〇時ですと、どちらがご都合よろしいでしょうか」

「もう仕組みがある」は、中身を分けて返す

製造業への電話で一番多い断りのひとつが「もう仕組みがある」です。実際、製造業では、何らかの形でデジタルの技術を使って業務を改善している会社が8割近くあります。従業員301人以上の会社では、何もしていない会社は1割に満たません。「何も入っていない」前提で話すと、その時点で外れます。

ただし、仕事ごとに見ると進み方はばらばらです。「製造」で取り組む会社が約4割なのに対し、「品質管理」は約2割にとどまります。「もうある」と言われても、それが会社のどの仕事の話なのかは、聞いてみないと分かりません。

出どころ:労働政策研究・研修機構「ものづくり産業におけるDXと人材育成に関する調査」(2024年11〜12月調査、2026年4月公表。製造業11業種・従業員30人以上の企業。何らかの取り組みあり77.2%、301人以上で「行っていない」6.6%、工程別は複数回答で「製造」39.9%・「品質管理」22.2%)

「もうある」には、中身の違う3つがあります。技術の深い知識が無くても、どれに当たるかを聞き分けることはできます。

本当にあって、満足している

今の仕組みで足りていて、不満も無い。入れ替えたばかりのこともある

次の見直しの時期だけ聞いて残す

あるが、一部だけ

別の仕組みで書類を作っているだけで、その先のまとめや分析は手作業。本人が「ある」と思い込んでいる

手作業で残っている所を聞く

あるが、不満を言えない

長い付き合いの取引先で、不満はあっても言い出せない

隙間を補う形で話す

返し方の基本は、まず相手より先に「すでにお使いの仕組みがあると思うのですが」と言っておくことです。相手が言いそうな断りを先に言うと、同じ理由で断りにくくなります。そのうえで、今の仕組みを否定せず、残っている手作業を聞く。「入れ替えてください」ではなく「今の仕組みにどうつなぐか」で話すと、相手は構えずに答えてくれます。

「やっているので」が一番強い断りになる商材もあります。その場合は、「今後の選択肢のひとつとして」「比べる材料として、話だけでも」と、ぐっと軽い形にして返します。工場長から「もう進めている」と言われたときは、実際の担当が別にいることが多いので、「工場長の目線で、今後の参考に見ていただきたい」と伝えると受けてもらいやすくなります。

技術の分かる人は、商談の後ろに置く

技術の分かる人が社内に少ないなら、その人の時間を電話ではなく商談に使うように流れを組みます。電話は技術に詳しくない人でも回せる形にし、技術の分かる人は、関心がはっきりした相手との商談にだけ入ります。

電話
技術に詳しくない人が受け持つ。業界の仕組みと相手の言葉で呼び出し、日程の打診まで言い切る
アポのあと
用途・量・時期・決める方など、目安を2つ以上聞いて記録する。持ち帰った質問も一緒に残す
一次商談
短い打ち合わせで関心の中身と時期を確かめ、技術の話が要る相手だけを次に回す
技術の商談
技術の分かる人が、記録を読んだうえで入る。持ち帰った質問に答えるところから始める

商談で大事なのは、相手の担当者が、聞いた話を社内で説明できるようにすることです。製造業では、話を聞いた担当者が一人で決めることはまずありません。上司や、実際に使う現場の人に話を通す必要があります。技術の分かる人が丁寧に話すのは、相手を説得するためではなく、担当者が社内で同じ説明をできるようにするためです。

一度の電話で止まった相手に、持ち帰った答えを持ってかけ直すのも有効です。答えを用意できたこと自体が、次の電話の理由になります。止まった先の起こし方は「製造業の失注先の掘り起こし方」で、部署ごとの呼び出し方は「工場の部署別の当て方」で取り上げています。

うまくいった例・いかなかった例

技術に詳しくない人が、製造業への電話で何をして何が分かったかを紹介します。会社名は伏せ、商材の種類だけを書いています。

うまくいった例

「検査の書類はもう自動化されている」と言われた、品質管理の仕組み

状況

化学・金属の熱処理・食品の工場に、品質管理の仕組みを案内した。「検査成績書は自動化されている」という返事が多く返ってきた

やったこと

そこで電話を終えず、どう作っているかを聞いた。多くは、別の基幹の仕組みで成績書を作っているだけで、たまったデータをまとめて傾向を見るところまでは手作業だった

分かったこと

相手は「ある」と思っていても、ある仕組みとない仕組みが混ざっていることがある。成績書の作成ではなく、たまったデータを品質の改善に使う話に切り替えると、話が進んだ

うまくいった例

「うちはもうやっている」が一番多かった、機器に組み込む通信の部品

状況

機器を作るメーカーに、組み込んで使う通信の部品を案内した。「使わない」「取引先の回線を借りているので要らない」という断りが続いた

やったこと

電話では利点を「自社で開発や認証を取る手間が無くなる」と一言だけ伝え、押すのは商談に回した。断られたら「今後の選択肢のひとつとして、費用の面も含めて話だけでも」と、より軽い形で返した

分かったこと

担当者にさえつながれば、話は聞いてもらえることが多かった。技術の利点を電話で説明し切らなくても、商談の場を作れば技術の分かる人が話せる

いかなかった例

大手の研究所に、技術の新しさから入った

状況

化学メーカーの研究所に、材料の開発を助ける仕組みを案内した。最初は技術の新しさを伝える台本で、大手の新規にはほとんどアポにならなかった

やったこと

台本を、研究の現場で「よくある失敗の場面」と「製造の工程の見直し」の話に寄せて書き直した

分かったこと

書き直した月は、同じくらいの数の電話でアポが数倍になった。技術の新しさは技術の分かる人でないと語れないが、現場で起きる失敗の場面なら、誰でも言葉にできる

まとめ:技術の分かる営業がいなくても、線を引けば製造業に売れます

技術の分かる営業がいなくても製造業に売るために押さえること

  • 電話の目的は商談の約束。技術の知識で勝とうとしない台本にする
  • 技術の細かい中身より先に、業界の仕組み(誰がその仕事をしているか)と相手の言葉を覚える
  • 電話で聞くのは提案の入口に要る目安まで。判断が要る質問は持ち帰る
  • 答えられない質問は、技術の分かる人が答える場として商談の日程に変える
  • 「もう仕組みがある」は、満足・一部だけ・不満を言えない、のどれかを聞き分けて返す
  • 技術の分かる人の時間は、電話ではなく商談に使う

製造業の相手は、詳しい人ほど、分からないことを分からないと言える相手を信用します。線を引き、持ち帰ると約束し、その約束を商談で果たす。それができれば、技術の分かる営業が少なくても、製造業に話を聞いてもらえる相手は増えていきます。

よくある質問

技術の分かる営業がいなくても、製造業への新規開拓はできますか?
できます。電話の目的は商談の約束を取ることなので、技術の説明で勝つ必要はありません。業界の仕組みと相手の言葉を覚えて正しい相手を呼び出し、電話で聞くのは用途や量・時期などの目安までにして、判断が要る質問は技術の分かる人がいる商談に回します。
製造業の担当者に専門的な質問をされて答えられないときは、どうすればよいですか?
推測で答えず、「技術の者から正確にお答えします」と持ち帰ることを約束します。そのうえで「その点も含めて直接ご説明します」と商談の日程を出します。詳しい質問は関心がある証拠なので、答える場としてアポにつなげられます。
「もう仕組みが入っている」と断られたときは、どう返せばよいですか?
まず相手より先に「すでにお使いだと思うのですが」と言っておきます。そのうえで、今の仕組みを否定せず、手作業で残っている所を聞きます。「ある」と言われても、実際には一部の仕事だけということが多く、そこを補う形で話すと進みやすくなります。

製造業での支援事例は「製造業の営業代行実績」にまとめています。

このような状況でしたら、

ぜひセグロスにご相談ください

  • 技術の分かる営業が少なく、商談が組めるまで時間がかかる
  • メーカーの技術者に電話すると、専門的な質問で止まってしまう
  • 工場に電話しても「もう仕組みがある」で終わってしまう
  • 技術の分かる人の時間を、関心のある相手との商談に集中させたい
  • 外注したいが、活動の中身が見えなくなるのが不安
まずは現状を伺い、「どこで詰まっているか」と「次の一手」を整理します。

(外に任せるべきか、自社で直すべきかも含めて整理します)