新規事業の営業の立ち上げ方|「売れるか」を3か月で確かめたい担当者の方へ

この
- 新規事業の営業を、3か月で「売れるか・売れないか」を判断できるところまで持っていく全体の流れ
- 始める前に決めること(期間・判断の基準・止める条件など)と、月ごとにやること・見るもの
- 途中で区分を残す・落とす判断の仕方と、3か月後の「進める・切り口を変える・止める」の分かれ方
このコラムは、次のような方に向けて書いています。
新規事業の営業は、既存事業の営業とは目的が違います。既存事業なら「どれだけ売るか」を追いかけますが、新規事業の最初の数か月で追いかけるのは「そもそも売れるのか、売れるなら誰に、どう言えば売れるのか」です。
ところが現場では、期間も判断の基準も決めずに電話を始め、アポの数に一喜一憂し、相手を次々に変えて、どこが悪かったのか分からないまま半年がたつ、という立ち上げが珍しくありません。
この記事は、新規事業室・事業開発・経営企画で新しい事業や商品を担当している方、新しい事業を始めた中小企業の社長に向けて、3か月という区切りの中で「売れるか」を判断できるところまで持っていく進め方をまとめます。電話や商談で相手の本音を引き出す考え方そのものは「新規事業テストマーケティングのやり方」に書いているので、ここでは3か月をどう区切り、いつ何を決めるかに絞ってお伝えします。
前提:最初の3か月は「売る期間」ではなく「売れるかを判断する期間」
新しい市場で売上を立てるのは、それだけで難しいことです。国の調査では、新しい市場の開拓で売上目標を達成できた中小企業の割合は、今の市場での開拓に比べて大きく下がります。一方で、市場の求めを把握している企業は、把握していない企業より目標を達成した割合が高いという結果も出ています。
| 売上目標を |
市場の |
把握していない |
|---|---|---|
| 今の市場の開拓 | 60.2% | 49.0% |
| 新しい市場の開拓 | 26.4% | 16.6% |
出どころ:中小企業庁「2015年版 中小企業白書」(中小企業庁の委託による「市場開拓」と「新たな取り組み」に関する調査、2014年12月。中小企業・小規模事業者が対象)
新しい事業で最初にやるべきことは、売上を追うより先に、誰がどんな理由で買うのか(あるいは買わないのか)をつかむことです。それは机の上の調べものでは分からず、実際に売りに行って初めて分かります。そこで最初の3か月は、「売れるかを判断する期間」として組み立てます。
追いかけるもの
区分ごとの反応と、断られた理由
「どこが当たり、なぜ当たったか」が分かれば、数が少なくても前に進める
成功の形
数の多さではなく、判断がついたこと
「売れない」と分かったことも、次の投資を無駄にしないための成果になる
3か月後の手元
「この相手に、この言い方で、この価格なら入る」という答え
その答えが、続けるか・変えるか・止めるかを社内で決める根拠になる
POINT
始める前に、期間・判断の基準・止める条件を決めて共有する
3か月で判断までたどり着けるかどうかは、始める前にほぼ決まります。電話をかけ始めてから考えるのでは遅く、始める前に、判断のしかたそのものを決めて、上司や関係する部署と共有しておくことが大切です。
始める
期間と、判断する日
「いつまで動いて、いつ判断するか」を先に決める。月の終わりごとに見直しの日を置き、3か月目の終わりに結論を出す日を決めておく。
判断の基準
何が出たら先に進み、何が出たら見直すか。「アポの数」ではなく、「商談で相手が具体的な条件の話に入ったか」「同じ理由の断りが重なったか」など、反応の中身で決めておく。
止める条件
どうなったら止めるかも、始める前に言葉にしておく。後から決めると、つぎ込んだ時間や費用に引っ張られて、止める判断が遅れる。
アポが
区分によってはアポが0件のこともある。それも「この相手には売れない」と分かった成果だと、関係者に先に伝えておく。
もう一つ、始める前に仮で決めておくものがあります。「誰に(どの会社の、どの立場の人に)」「どんな悩みに」「何の価値を」「なぜ今なのか」の4つです。これが決まっていないと、電話でも商談でも「これはどうですか、あれはどうですか」と相手に聞く形になり、相手は「まあ、いいんじゃないですか」としか答えられません。正解でなくてかまいません。一旦こうだと決めてぶつけ、外れたらその反応を次の仮の答えにするのが、3か月で答えにたどり着く近道です。誰に売るかがまだ決まらないときの、業界の決め方と売り文句の並べ方は「新規事業で売る相手の決め方と売り文句の試し方」で詳しく書いています。
あわせて、「買いたい」と言われたときに受け止められるかも確かめておきます。仮の価格(幅でもよい)、契約の形、最初に導入してもらうときの手順、そして「売ってよい」という社内の了承。これらが無いと、相手が前向きになった瞬間に「社内で確認します」としか言えず、反応を逃します。「結局いくらぐらいですか」は必ず聞かれるので、確定した料金表でなくても「この範囲です」と答えられる用意はしておきます。
3か月の全体像:広く当てる、絞る、内諾を取りに行く
3か月の流れは、次のように区切ると判断がしやすくなります。最初から1つの相手に絞らず、広く当ててから、反応で絞り、最後に内諾を取りに行くという順番です。
1か月目
広く当てる
複数の区分に、同じくらいの数ずつ当てる。売り文句も2〜4通りを並べる。目的はアポの数ではなく、反応の材料集め
2か月目
絞る
反応の悪い区分を落とし、候補に残していた区分と入れ替える。売り文句を、反応の良かった言い方に寄せて作り直す
3か月目
内諾を取りに行く
反応の良い2〜3の区分に力を集め、商談で具体的な条件まで詰める。結果を区分ごとにまとめて結論を出す
この区切りは目安です。実際の判断は、月の終わりを待たずに週ごとに積み重ねていきます。どの区分を残すかの方向は早めに、どう売るかの勝ち筋は2か月ほどかけて固め、結論は3か月で出す、という速さの違いを意識しておくと、途中で焦らずに済みます。
また、売れると分かってから本格的に伸ばすには、さらに期間がかかります。3か月で事業を軌道に乗せる計画ではなく、3か月で次の投資を決める計画として社内に説明しておくと、期待がずれません。
1か月目は、区分を分けて広く当て、反応の材料を集める
1か月目は、思いつく区分を広く出し、どの区分にもまんべんなく当てます。ここで大事なのは、最初から「たぶんここだろう」と1つに絞らないことです。1つに絞って外れると「ダメでした」しか残らず、理由が業種なのか、言い方なのか、価格なのかも切り分けられません。広く当てておけば、当たらなかった区分も「当たらない」という情報として残ります。
記録は、数と声をセットにするのがこつです。アポの多い区分が分かっても、それだけではなぜ当たったのかが分かりません。「どの言い方に反応したか」「何と比べていたか」「価格を聞いてどう反応したか」が残っていれば、2か月目の絞り込みの根拠になります。
1か月目は、少ない商談を深く詰めるより、多くの相手に浅く当てて反応の幅を見る方が得るものが大きくなります。電話で集めた声を製品の側にどう返すかは「新規事業の需要の確かめ方」にまとめています。
2か月目は、どこで止まったかを分けて見て、残す・落とすを決める
2か月目に入ると、区分ごとの差が見え始めます。ここでやるのは、反応の悪い区分を落とし、良い区分を残すことです。ただし、「アポが少ない」だけで落とすと、当たっていた区分まで捨ててしまうことがあります。まず、どこで止まったのかを分けて見ます。
| 止まった場所 | 疑うもの | 次の手 |
|---|---|---|
| 受付で |
入口の |
部署の |
| 担当者と |
売り文句の |
反応の |
| 断りの |
相手の |
言い方は |
| 商談は |
商談の |
価格・ |
たとえば断りの大半が「うちはそれを扱っていない」なら、話し方ではなく相手が違うという合図で、話し方を作り直しても結果は変わりません。止まった場所と断りの中身を見て、「相手を変えるのか、言い方を変えるのか、入口を変えるのか」を決めます。
NG 少ない
数十件だけ当てて「この区分はダメ」と決める。たまたま不在が重なっただけで、区分ごと捨ててしまう
OK 率が
1件や2件の結果は参考にとどめ、同じ傾向が重なってから判断する。滑り出しが良すぎるときも、下がる前提で見る
NG 一度に
相手・言い方・入口を同時に変える。良くなっても悪くなっても、何が効いたのか分からない
OK 変えるのは1回に1つ
相手を変える週、言い方を変える週と分ける。1件だけ出た強い声ではなく、件数の多い声から直す
落とした区分の代わりには、候補に残しておいた区分を入れます。狙っていなかった相手から思わぬ反応が出たときは、無理にアポにせず、「新しい狙い先の候補」として記録に残しておくと、3か月目以降の材料になります。
3か月目は、残した区分に集中し、好感触ではなく内諾を取りに行く
3か月目は、反応の良かった2〜3の区分に力を集めます。ここで初めて絞ります。そして、この月のゴールは「好感触」ではなく内諾です。内諾とは、「この条件がそろえば、やります」という、条件付きの「はい」のことです。
NG 好感触で終える
「いいですね」「面白いですね」「また情報をください」と言われて商談を終える
→ 本当に買うのか分からないまま。社内では「反応は良かった」としか報告できない
OK 内諾を取りに行く
「仮にこの価格・この形で始めるとしたら、進めていただけますか」と、相手が決める前提の話に入る
→ 進める条件か、進めない理由が、はっきり見えてくる
相手が具体的な条件の話に入ると、「その価格では出せない」「この機能がないと現場で回らない」「決めるのは別の部署だ」といった本音が出てきます。断りであっても、事業を判断するうえで一番価値のある材料です。本音が出るきっかけや、買う前提で話すときに出しておく材料は「新規事業テストマーケティングのやり方」で書いています。
内諾を取りに行く相手は、使う人だけでなく、決める立場の人か、少なくとも上に話を上げられる人にします。使うだけの人の「あったらいいね」と、お金を出して決める人の「これなら買う」は、まったく別のものです。製品がまだ完成していない段階なら、発売の見込みが立っている範囲で「できたら使う」という申し込みを集めておく進め方もあります。最初の導入先や、試しの導入に協力してくれる会社の探し方は「新規事業の最初の導入先の探し方」にまとめています。
POINT
3か月後の判断は「進める・切り口を変える・止める」の3つに分かれる
3か月目の終わりに出す結論は、おおむね次の3つに分かれます。
進める
当たる区分と売り文句がはっきりし、内諾か、それに近い答えが出た
力を集める区分を決め、売る体制づくりへ。伸ばす期間と予算は改めて組む
切り口を変える
反応はあるが、相手か言い方か価格のどこかが合っていない
製品か売り方のどちらを直すかを決め、直してからもう一度当てる
止める
区分を変え、言い方を変えても、同じ理由で止まり続けた
「売れない」と分かったことも成果。時間と予算を次の事業に回す
どの結論でも、手元に残す材料は同じです。次の5つがそろえば、社内で結論を説明できます。
| 手元に残す材料 | 中身 |
|---|---|
| 価格の上限 | いくらまでなら |
| 当たる相手の輪郭 | どの |
| 決まり方 | 誰が |
| 最初の |
どんな |
| 断られた理由の正体 | 売り方で |
結果は、製品の側の声と、売り方の側の声に分けてまとめます。「性能が求める水準に届いていない」「今の業務の流れに組み込めない」は製品の側の声です。「呼び出していた部署が違った」「予算を組む時期と合っていなかった」は売り方の側の声です。分けておけば、どちらを直すべきかがすぐに分かります。
結果が悪かったときほど、何を確かめるために、いつ何をしたかを、時系列で残しておくことが大切です。「当時はこの相手が良いと考えていたが、確かめたら違った」という筋道が見えれば、結果が悪くても「やらなければ分からなかった」ことが社内に伝わります。3か月の結果を次の予算の根拠にする考え方は「新規事業の営業費用を稟議で通す方法」で書いています。
3か月を無駄にしないために、途中でやってはいけないこと
3か月の途中には、焦りや期待から判断を誤りやすい場面があります。次の決めごとを、始める前に関係者と共有しておきます。
3か月を
焦って、
期限が迫ると、少ししか動いていないのに、反応のあった区分まで捨ててしまうことがある。足りないなら「足りないので続けたい」と言う。
「無理でした」で
結果が悪くても、「次はこの相手に、この件数まで当ててから判断しましょう」と、次の一手を添えて報告する。
最初から
新しい事業で目標を細かく固めすぎると、判断の材料を集める動きが、数を合わせる動きに変わる。
期待させすぎない
「すぐに絞れます」「高い率でいけます」と最初に言い切ると、3か月後に「話が違う」になる。分からないことは分からないと言う。
もう一つ、今ある事業を止めて新しい事業に全部を振り向ける判断にも注意が必要です。今の事業が回っているなら、それを続けながら新しい事業を確かめればよく、問うべきは「本当に売れるかを確かめたのか」です。確かめる前に体制を全部切り替えると、外れたときに戻る場所がなくなります。
うまくいった例・いかなかった例
ここからは、新規事業の営業で、3か月ほどの期間を区切って確かめた例を紹介します。特定を避けるため、会社名と商材の中身は伏せ、何をして何が分かったかだけを書いています。
開発中の材料で、当てる相手の切り方を変えた
状況
工場で使う開発中の材料の使い手を探していた。最初は「ある素材を扱っているか」で相手を選んでいたが、話のかみ合わない会社が混ざっていた
やったこと
断りの理由を見ると、大半が「扱っていない」「その加工はやっていない」だった。話し方は変えず、「その加工をしているか」で当てる相手を選び直した
分かったこと
選び直した後は、話を聞いてもらえる割合がはっきり上がった。止まった理由が話し方ではなく相手の選び方にあると分けて見たことで、直す場所を誤らずに済んだ
狙った相手に売れず、事業そのものを止めた
状況
新しい装置を、仮で立てた狙いの相手に当てて、売れるかを確かめた
やったこと
狙った相手には売れず、売りにしていた機能も、相手が導入を決める決め手にはなりにくいという反応だった。その結果を、よい面も悪い面もありのまま報告した
分かったこと
事業はそこで止める判断になった。売れないと分かったものを売り続けて手間をかけるより、次に移れると前向きに受け止められた。止める判断も、3か月で得られる大事な答えの一つ
2つの
まとめ:3か月で持ち帰るのは、アポの数ではなく事業の判断材料
新規事業の営業の最初の3か月は、売上を立てる期間ではなく、「売れるか」を判断する期間です。押さえるのは次のことです。
「売れるか」を
- 始める前に、期間と判断する日、判断の基準、止める条件、アポが出ないこともあり得ることを決めて共有する
- 誰に・どんな悩みに・何の価値を・なぜ今、を仮で決め、「買いたい」と言われたときの受け止め方も用意する
- 1か月目は区分を分けて広く当て、数と声をセットで区分ごとに記録する
- 2か月目は、どこで止まったかを分けて見て、区分を残す・落とす。変えるのは1回に1つ
- 3か月目は残した区分に集中し、好感触ではなく内諾を、決める立場の人から取りに行く
- 3か月後は「進める・切り口を変える・止める」を、手元に残した材料をもとに決める
新しい事業が売れるかどうかは、やってみなければ分かりません。だからこそ、小さく、早く、本気で当てて、3か月で判断がつく形にしておくこと。それが、次の投資を確かな根拠で決めるための一番の近道です。
よくある質問
新規事業の営業は、どのくらいの期間で「売れるか」を判断すればよいですか?
新規事業の営業で、アポが少ないときはすぐに相手を変えるべきですか?
3か月確かめて売れなかった場合、何を社内に報告すればよいですか?
新規事業の営業の立ち上げを外に任せる場合の進め方は「新規事業の立ち上げ支援」にまとめています。
新規事業の「売れるか」を確かめたい方は 新規事業立上支援事業の詳細はこちら
このような状況でしたら、
ぜひセグロスにご相談ください
- 新規事業の営業を、期間と判断の基準を決めて立ち上げたい
- 新しい事業が「売れるか」を、3か月ほどで見極めたい
- 電話を始めたが、続けるか・相手を変えるかを決められずにいる
- 経営会議で、続けるか止めるかを説明できる材料を集めたい
- 外に任せたいが、本当に結果が出るのか・情報の扱いは大丈夫か不安
(外に任せるべきか、自社で直すべきかも含めて整理します)