この記事でわかること
- 「化学」とひとくくりにせず、業種と立場(作る・渡す・使う)で営業リストを分ける理由
- 研究所や部署の番号から入り、部署を変えながら広げる、大手の化学・素材メーカーへの当て方
- 商社と樹脂・プラスチックの流れの中の会社への当て方と、化学・素材の会社でよく出る断りへの返し方
このコラムは、次のような方に向けて書いています。
「化学メーカーに広く電話しているのですが、どの業種が当たりなのか見えてきません」
「大手の化学メーカーに当たりたいのに、代表番号の受付で止まり続けています」
「樹脂の材料を売りたいのですが、素材メーカー・成形の会社・部品の会社のどこから当たればよいか決められません」
化学・素材の業界は、製造業の中でも裾野の広い業界です。石油化学、繊維、ゴム・タイヤ、塗料、樹脂、医薬品、化粧品。同じ「化学」の看板でも、作っている物も、設備の古さも、会社の大きさも大きく違います。
ところが営業リストの上では、これらが「化学」とひとくくりにされがちです。すると、どこで反応が良く、どこで悪かったのかが分からないまま、大手の代表番号に電話を重ねて終わります。
この記事は、化学・素材のメーカーや、その商社・材料を使う工場に、設備・材料・仕組み・サービスを売る会社に向けて、営業リストの分け方、大手への入り方、樹脂の流れの中での当て方をまとめます。製造業全体への電話の基本(本社より工場、最初の一言)は「製造業向けのテレアポ攻略法」にまとめているので、あわせて読んでみてください。
化学・素材は「ひとつの業界」ではない
化学工業は、製造業の中でも大きな産業です。プラスチック製品とゴム製品を含めた化学工業の出荷額は2023年に約50.9兆円で、製造業全体の13.6%を占め、輸送用機械に次ぐ規模です。そのうちプラスチック製品だけでも約13.3兆円あります。
出どころ:日本化学工業協会「グラフでみる日本の化学工業2025」(元の数字は経済産業省「経済構造実態調査」、2023年)
裾野が広い分、中にいる会社の立場もさまざまです。業種の違いに加えて、電話の前に、相手が材料の流れのどこにいるかを次の3つで押さえておきます。
作る側
原料・素材・化学品のメーカー
自社で反応や配合の工程を持ち、研究所や工場を抱える
渡す側
専門商社・輸入商社など
仕入れ先と客先の間に立ち、客先の要望を集めて流す
使う側
材料を加工する工場
受け取った材料で成形・加工をして、部品や製品を作る
立場が変われば、話を聞いてくれる部署も、困っていることも変わります。たとえば作る側のメーカーは自社に工程があるので、工程の見直しや設備の話ができます。一方、材料を仕入れて組み立てるだけの会社は、工程の話がしにくく、同じ提案では話が進みにくくなります。相手が「どの業種の、流れのどこにいる会社か」を決めてから電話するのが、化学・素材の営業の出発点です。
POINT
化学・素材の会社は、「化学」とひとくくりにした時点で、反応の違いが見えなくなります。業種と立場を、営業リストの列として最初に分けておきます。
営業リストは業種を細かく分けてかけ、反応の良い所に寄せる
化学の会社は数が多く、営業リストもすぐに数千件になります。この大きな束を上から順にかけるのではなく、業種ごとに区分を分けてかけ、区分ごとのアポになる割合を見比べます。アポの数で並べると、もともと社数の多い業種が上に来てしまうので、割合で比べるのがこつです。
実際に業種で分けてかけてみると、反応ははっきり分かれます。工場の設備や現場の技術の引き継ぎに関わる話を、化学・素材の各業種に案内したときの傾向は、次のとおりでした。
これは、ある商材での傾向にすぎません。売る物が変われば、反応の良い業種も変わります。大事なのは表の中身よりも、最初は区分を分けてかけ、反応の良い区分に寄せていくという進め方です。分けずにかけると、どこが良くてどこが悪かったのかが、後から分かりません。
反応が弱い区分も、すぐに捨てる必要はありません。医薬品や化粧品のように「その業種でどう使えるか」を話せずに止まった区分は、その業種での使い道を一言で言えるようになってから、もう一度かけると結果が変わる余地があります。
狙う規模は中堅から大手の手前。大手だけに絞らない
化学・素材の業界には、売上が何千億円という大手が並びます。「せっかくなら大手に」と考えがちですが、大手だけに絞ると、次の2つの理由で行き詰まります。
NG 大手だけに絞った場合
化学×大手は、そもそも社数が少ない。営業リストがすぐに尽き、不在の先に何度もかけ直すことになる
OK 中堅から大手の手前も持つ場合
新しい取り組みを始めるだけの体力があり、組織もまだ複雑すぎない。担当者に話が届きやすい
NG 小さすぎる会社
新しい技術や仕組みに、まだ手を付けられる段階にない。話は聞けても、先に進みにくい
OK 大手に当てるなら
部署の番号や名前を先に用意し、かけ直しの管理まで決めてから。中堅と同時に動かす
大手に絞ったからといって、アポになる割合が上がるわけでもありません。大手の条件を付けて続けた期間と、条件を外した期間で比べても、割合はほとんど変わりませんでした。数が少なく、受付で止まりやすい分、むしろ手間だけが増えます。
一方で、商材によっては反対の分かれ方もします。法令や規格への対応のように、大手ほどすでに手を打っている話では、中堅以下に困っている会社が多くなります。「大手がよい」「中堅がよい」と決め打ちせず、規模の区分も分けてかけて確かめるのが確実です。
大手は研究所や部署の番号から入り、部署を変えながら広げる
それでも大手に当てたいときは、入口を変えます。大手の代表番号は、受付に一番止められる入口です。素材・化学の大手は研究所や工場を各地に持ち、その番号が公開されていることも多いので、代表番号ではなく研究所や部署の番号から入ります。大手の化学メーカーの研究所に電話したときは、研究開発の部署の番号にかけた方が、代表番号にかけたときより担当者と話せた割合が2倍以上高くなりました。
ただし、ひとつの部署で断られても、その会社の答えではありません。化学・素材の大手には、研究開発、技術企画、品質保証、生産技術と、商材に関わる部署がいくつもあります。
大手の化学・素材メーカーに当てるときの決めごと
番号は研究所や部署から
代表番号から順番につないでもらおうとしない。研究所・工場・部署の番号を、公開情報から先に探しておく。
部署を変えて当て直す
研究開発で断られたら、技術企画・品質保証・生産技術へ。断りは「その部署の今の答え」として記録する。
相手のテーマで呼ぶ
会社のホームページやニュースで、その部署が進めている製品やテーマを調べ、その名前で呼び出す。
調べた先を残す
番号や部署名をどこで調べたかを記録しておく。「なぜこの番号を」と聞かれたとき、すぐ答えられる。
研究開発の部署が入口になりやすいのは、新しい技術や材料の情報を集めることに前向きな人が多いからです。導入はまだ先でも「話は聞いておきたい」という人に当たりやすく、そこで聞いた話を、ほかの部署に当てるときの手がかりにできます。研究開発の部署への電話の組み立ては「研究開発・設計部門への営業方法」で詳しく書いています。
もうひとつ、大手の化学・素材メーカーでは、社外からのメール、特に添付のあるメールが、相手の会社の仕組みで弾かれて届かないことがあります。「資料はメールで送ればよい」と思わず、届いたかを電話で確かめる前提で組んでおきます。
商社は「客先の要望」が集まる橋渡し役として当てる
商社は、作る側と使う側の間に立つ会社です。客先の工場から「こんな性能の材料はないか」「この品質の書類がほしい」といった要望を受け、仕入れ先に流すのが仕事なので、客先の困りごとが一番早く集まる場所でもあります。
使う側の工場
材料を買うときに、性能・品質・環境への対応などを取引先に求める
渡す側の商社
客先から受けた要望を、仕入れ先に流す。確認や調整の手間がここに集まる
作る側のメーカー
求められた性能や書類に合わせて、材料や対応を整える
親会社から
親会社の基準が厳しい会社ほど、グループの会社や取引先にも同じ対応を求める
この流れが分かると、商社にどう当てるかが見えてきます。商社には、メーカーのような研究所や品質保証部が無いことが多く、要望の取りまとめは営業の一人ひとりが自分の取引の中で受けています。だから「〇〇部のご担当の方を」と部署で呼ぶと、「そういう部署はない」で終わりがちです。「その材料を扱っているご担当の方」「仕入れ先とのやり取りをまとめている方」と、仕事の中身で呼び出します。
商社は、業界の出来事にもすぐ反応します。原料の供給に不安が出たときや、取引先の要求が変わったときは、仕入れ先の見直しや確認がまさに今の困りごとになります。業界のニュースを押さえて、その話が相手の仕事に響いている時期にかけると、話の入りが変わります。
樹脂・プラスチックは、流れを段に分けて当てる
樹脂・プラスチックは、化学・素材の中でも特に流れが長い分野です。樹脂を作る素材メーカーから、商社、成形・加工をする会社、部品や製品を作るメーカーへと、何段にも分かれて渡っていきます。新しい材料や、樹脂に混ぜて使う材料を売るとき、「樹脂の業界」とひとくくりにして電話すると、どの段の、どの部署が使い手になるのかが見えないまま終わります。
段を分けたうえで、段ごとに電話して反応の違いを見比べます。結果を「流れの中の立場・部署・規模」ごとにまとめておくと、売り出したあとにどこを狙うかの判断にそのまま使えます。
まだ開発中の材料なら、売り込みではなく、「開発中の材料に、現場のご意見をいただきたい」という形にします。成形・加工の会社を、事業の中身・会社の規模・扱っている製品の3つで並べて優先順位を付けて当たり、商談で聞いた成形の現場の困りごとをトークに足していくと、材料のどこを伝えればよいかもはっきりしてきます。
化学・素材の会社でよく出る断りと返し方
化学・素材の会社と話せたあとに出る断りにも、この業界らしい形があります。断りの言葉そのものに言い返すのではなく、断りの理由を受け止めて、相手がまだ手を付けていない所に話を移すのが基本です。
「工場では決められない」
工場は本社や親会社の方針で動くことが多い。工場の担当は決められなくても、現場の困りごとは知っている
「すぐの導入ではなく、情報共有の場として」とお願いする
「もう仕組みがある」
仕組みはあっても、手作業で回している部分が残っていることが多い
「手作業で残っている所はありますか」と聞き、そこから話す
「前に検討してやめた」
見送った理由が、今は変わっていることがある
見送りの理由を聞き、変わった所を伝えて、まず資料から見てもらう
「資料だけ送ってほしい」と言われたときは、言われた時点で見分けます。説明の途中で「そういうのはいいので」と切られたのなら、それは断りです。一方、ひととおり聞いてもらったうえで「まずは資料から」と言われたのなら、それは中身を見てから決めたいという、前向きな答えです。送ったら数営業日のうちにかけ直し、届いたか、見てもらえたかを確かめます。
大手では、外部のサービスの使い方に社内の決まりがあり、「その種類のものは使えない決まりがある」と言われることもあります。ただ、この確認は導入の最後の段階で関わることがほとんどです。電話の段階では深入りせず、「その確認は最後の段階で」と受け止めて、まず話を聞いてもらうことに集中します。断りや見送りの記録の残し方は「製造業の失注先の掘り起こし方」にまとめています。
うまくいった例・いかなかった例
ここからは、化学・素材の会社への電話で、何をして、何が分かったかを紹介します。特定を避けるため、会社名は伏せ、どんな電話だったかだけを書いています。
うまくいった例
大手の化学メーカーの研究所向けに、話す中身を変えた
状況
大手の化学メーカーの研究所に新しい技術を案内していたが、新しい会社からのアポがほとんど出ない月が続いた
やったこと
商材の説明から入るのをやめ、「よくある失敗の例」と「製造の工程の見直し」という、研究の現場が日々ぶつかっている話から入るトークに変えた
分かったこと
翌月は、大手の新しい会社からのアポが数倍に増えた。研究所の担当は、商材より「自分たちの仕事のどこに関わるか」で聞くかを決めている
うまくいった例
開発中の材料を、成形・加工の会社に「意見をいただく」形で案内した
状況
売り出し前の材料で、樹脂の流れのどこに使い手がいるのかが見えていなかった
やったこと
成形・加工の会社を、事業の中身・規模・扱う製品で並べて当たり、売り込みではなく現場の意見をもらう形で案内した。初めの反応で順番を組み替え、途中からは大手の素材メーカーの研究開発の部署にも広げた
分かったこと
売り出す前の段階で、サンプルを評価してもらう候補の会社が多く見つかった。成形の現場の具体的な困りごとが分かり、材料のどこを伝えればよいかもはっきりした
いかなかった例
大手の化学メーカーだけに絞って電話した
状況
「大手に当たりたい」という希望に合わせ、化学×大手に営業リストを絞った
分かったこと
化学×大手は数が少なく、受付で止まる会社も多いため、営業リストがすぐに尽き、不在の先に何度もかけることになった。大手に絞るなら、部署の番号や名前を先に用意し、かけ直しの管理まで決めておく。中堅から大手の手前も同時に持つ
3つの例から言えること
どれも、話し方の前に「どの業種の、どの規模の会社の、どの部署に、何の話で当てるか」を決め直しています。化学・素材の営業は、分け方を決めた時点で半分が決まります。
まとめ:化学・素材の営業は、分けてかけて、寄せていく
化学・素材の業界は、ひとくくりにすると電話が通じず、分けてかけると反応の違いが見えてくる業界です。押さえるのは次の6つです。
化学・素材の会社への電話で押さえること
- 「化学」とひとくくりにせず、業種と立場(作る・渡す・使う)を営業リストの列にする
- 区分ごとにかけて、アポの数ではなく割合で比べ、反応の良い区分に寄せる
- 大手だけに絞らない。中堅から大手の手前を厚く持ち、規模の区分も分けて確かめる
- 大手は研究所や部署の番号から入り、部署を変えながら当て直す
- 商社は部署ではなく仕事の中身で呼び、客先の要望が集まる場所として当てる
- 樹脂・プラスチックは流れを段に分けて当て、開発中の材料は「意見をいただく」形で案内する
同じ材料、同じ仕組みを売るのでも、業種・規模・立場が変われば、聞いてくれる人も、響く話も違います。まず分けてかけ、反応を見て寄せていくこと。それが、裾野の広い化学・素材の業界で、話を聞いてもらえる電話をつくる近道です。
よくある質問
化学メーカーに営業するとき、どの業種から当たればよいですか?
最初から決め打ちせず、繊維・ゴム/タイヤ・石油化学・化学品・塗料・樹脂・医薬品・化粧品などに区分を分けてかけ、区分ごとのアポになる割合を見比べます。社数の多い業種はアポの数も多くなるので、数ではなく割合で比べ、反応の良い区分に寄せていきます。
大手の化学メーカーに電話がつながりません。どうすればよいですか?
代表番号ではなく、研究所や部署の番号から入ります。研究開発の部署の番号は、代表番号より担当者と話せる割合が高くなりやすいからです。その部署が進めている製品やテーマを調べて名前で呼び出し、ひとつの部署で断られても別の部署に当て直します。大手だけに絞ると営業リストが尽きやすいので、中堅から大手の手前も同時に持ちます。
樹脂・プラスチックの材料は、どこから営業すればよいですか?
素材メーカー、商社、成形・加工の会社、部品・製品のメーカーと、流れを段に分けて当て、段ごとの反応を見比べます。成形・加工の会社は事業の中身・規模・扱う製品で並べると優先順位を付けやすく、開発中の材料なら「現場のご意見をいただきたい」という形で案内すると話を聞いてもらいやすくなります。
製造業での支援事例は「製造業の営業代行実績」にまとめています。
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