補助金・報酬改定の使い方は商材と時期で変える|介護・福祉の営業担当へ

この記事でわかること
- 相手がもう持っている種類の商材と、まだ入っていない種類の商材で、補助金の出し方を逆にする理由
- 都道府県ごとに違う補助金の締め切りから、どの地域にいつ電話するかを決める方法
- 報酬改定・補助金の1年の日程を手元に置き、次の「なぜ今」を早めに用意するやり方
このコラムは、次のような方に向けて書いています。
介護・障害福祉の施設・事業所への電話で、報酬改定・加算・補助金の話を「電話した理由」に使うのは定番のやり方です。制度の話は最初の一言だけにして、売り文句にはしない。この基本は介護・障害福祉向けのテレアポ攻略法にまとめています。
ただ、同じ「補助金」の一言でも、売る物と電話する時期によって、効き方がまるで逆になります。ある商材では入口として強く効き、別の商材では断りの理由そのものになります。同じ補助金でも、県によって締め切りが1か月半ほどずれます。この記事では、その使い分けだけを深くお伝えします。
前提:同じ補助金の一言でも、商材と時期で効き方が逆になる
制度の話を電話で使うとき、多くの会社は「補助金が使えます」「改定があります」という一言を、どの商材でも、どの月でも同じように使っています。ところが電話の記録を並べると、同じ一言が、ある電話ではアポの決め手になり、別の電話では切られる理由になっています。
分かれ目は大きく3つです。売る物が相手にとって「もう持っている種類の物」か「まだ無い種類の物」か。相手の地域の補助金が、今どの段階にあるか。国の制度の日程の中で、今がどこにあたるか。この3つで、制度の話の出し方と、電話する時期を変えます。
売る物で分ける
相手がもう持っている種類の物か、まだ入っていない種類の物か
補助金を最初に出すか、最後に出すかが逆になる
地域で分ける
補助金の受付の時期と締め切りは、都道府県ごとに違う
締め切りの近い地域から先にかける
時期で分ける
報酬改定や国の仕組みの切り替えには、決まった流れがある
効かなくなる前に、次の話を用意しておく
制度の話を「入口の一言」にとどめることは、どの場合も変わりません。そのうえで、この3つの分け方を足すと、どの商材で、どの地域に、いつ、どんな一言で電話するかまで決められるようになります。
相手がもう持っている種類の商材では、補助金は最後の「金額の話」に回す
記録や請求の仕組みのように、ほとんどの事業所がもう何かしら使っている種類の商材があります。公的な調査でも、パソコンの介護ソフトで利用者の情報を入力・保存している事業所は75.4%です。介護の報酬は決まった形の電子データで請求するため、何も入れていない事業所はほとんどありません。
出どころ:介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」
こうした商材で、最初に補助金の話を出すと、相手にはこう聞こえます。「すぐに入れ替えさせる話」「補助金の案内の電話」。管理者は補助金の名前を何度も聞いているので、「補助金は知っています」と、その場で電話が終わります。実際に、補助金の話から入った電話では「知っているからいい」が断りの理由として目立って出ていました。
もうひとつの落とし穴は、補助金や「生産性向上」の言葉だけでアポが取れてしまうことです。相手はその商談を「制度の情報をもらう場」と思って待っています。訪問しても名刺交換と挨拶で終わり、見積まで進むアポはほとんどありませんでした。アポの数は取れても、商談の中身が無いのです。
そこで、相手がもう持っている種類の商材では、補助金の出し方を逆にします。入口では現場の困りごと(記録・請求・職員の手間)を聞き、補助金は電話の最後に「実際にいくらになるか」を試算するための材料として、少しだけ出します。
NG 電話の入口で
「補助金を使って、新しい仕組みに入れ替えられます」と、最初に補助金を出す
「補助金は知っている」「入れ替えの話なら結構」で、その場で切られやすい
OK 電話の入口で
記録や請求で手間がかかっている所を先に聞き、補助金の話はまだ出さない
「今お使いの物で困っていること」が聞ければ、商談で話すことが決まる
NG 電話の最後に
「補助金の対象なので、ぜひご検討を」と、検討のお願いで終える
相手は何を見に来るのか分からず、挨拶だけの訪問で終わる
OK 電話の最後に
「補助金も使えるので、実際いくらになるか一度試算してみませんか」と、金額を見る場として約束する
実際の画面と、その施設の規模での概算を見る商談になり、見積に進みやすい
「補助金は知っています」と言われたときも、補助金の説明はしません。知っている相手に説明を重ねても、話は前に進まないからです。補助金の話から、金額の話に切り替えます。補助金の開始の時期や締め切りの細かい話にも深入りしません。
「補助金は知っています」と言われたときの返し方の例
もうひとつ大事なのは、今使っている物のことを、電話の最初に詳しく聞きすぎないことです。「今は何をお使いですか」と先に聞くと、「入れているので要りません」に流れやすくなります。今使っている物や契約の時期は、アポが決まってから聞く方が話が進みます。
まだ入っていない種類の商材では、補助金は入口になる。ただし受注は交付決定で止まる
反対に、施設・事業所の多くがまだ入れていない種類の商材では、補助金はアポの入口として強く効きます。相手にとって「お金がかかるから後回しにしていた物」が、補助金で手の届く物に変わるからです。補助金をテーマにした勉強会を開くと、申し込んだ施設からまとまってアポが取れることもありました。
ところが、ここで終わると受注で止まります。補助金は、申請してすぐにお金が出る仕組みではありません。都道府県の受付に申請し、交付の決定を待ち、決定のあとで導入し、報告を出してから補助金が支払われます。2026年度のある県の案内では、交付の決定のあとに施設が自分のお金で導入し、実績の報告を経て翌年3月頃に補助金が支払われる流れになっています。
出どころ:宮城県「令和8年度介護テクノロジー導入支援事業補助金について」(2026年10月1日掲載)
申請まで
アポは取りやすい
「補助金が使えるなら話を聞きたい」と、入口として一番効く時期。見積と申請の書類づくりが商談の中心になる
交付の決定まで
話が止まりやすい
決定を待つ数か月の間に、相手の熱が下がる。「補助金が出てから」と契約が止まり、決定が出なければ話が消える
交付の決定のあと
契約と導入
決まった施設から契約に進む。ここで初めて受注になる
補助金の受付の時期と、決定が出るかどうかに、受注のすべてがかかってしまうのです。決定を待つ間に、数か月から1年近く話が止まったこともありました。そのうちに、補助金の申請を手伝う業者や、同じ補助金の枠を狙うほかの機器と、施設の中で取り合いになることもあります。
補助金をテーマにした勉強会に申し込んだ施設でも、「補助金があっても、残りの負担が出るし余裕がない」と止まる所がありました。補助率が高くても、自分で払う分はゼロになりません。2026年度は導入費の5分の4を補助する県もありますが、その場合も残りの5分の1は施設の持ち出しです。申し込んだから前向きだ、と決めつけないことが大切です。
出どころ:宮城県 同上(補助率は導入費の5分の4)。補助率・上限は都道府県と年度ごとに違います。
補助金を入口にするときの決めごと
補助金が無くても買う理由を固める
補助金はアポの入口にとどめ、商談では現場の困りごとを中心に話す。補助金の決定が出なくても検討が続く施設が、本当の見込み先です。
自分で払う分の金額を先に伝える
補助率が高くても持ち出しは残る。「補助金で無料になる」と受け取られると、あとで必ず止まる。残りの負担の目安を早めに伝えます。
交付の決定の時期を、次の連絡の日にする
決定を待つ間に連絡が途切れると熱が下がる。県の案内に書かれた決定の時期を聞き、その頃に連絡する日を先に決めておきます。
補助金に頼らない入口も並べて持つ
補助金だけに頼ると、受付が終わった月から急にアポが取れなくなる。現場の困りごとから入る話も、同じ営業リストで並べて使います。
補助金でアポが取れていた商材でも、受注が採択の待ちで止まり続けるなら、あえて補助金を前に出すのをやめ、現場の困りごとから入る形に切り替える判断もありえます。アポの数は減っても、商談から先に進む話の割合が上がるからです。
補助金ありきの設備は、都道府県ごとの締め切りから逆算してかける
見守りの機器、職員どうしの連絡の機器、記録の仕組みをまとめて入れる設備のように、金額の大きい物は、施設の側でも「補助金や交付金とセットで考える物」になっています。こうした物では、欲しいかどうかより、申請の時期に間に合うかどうかで検討が決まります。
介護の機器やソフトの導入を助ける補助金は、国の事業を都道府県が受け付ける形です。そのため、受付の時期・締め切り・補助率・対象が、県ごと・年度ごとに違います。2026年度の例を2つ並べると、時期の差がよく分かります。
| 都道府県(2026年度) | 受付・締め切り | その後の流れ |
|---|---|---|
| 茨城県 | 4月30日に要項を公表、事前の協議は6月30日まで(受付は終了) | 内示は9月中、交付の決定は9月末、実績の報告は2027年1月29日まで |
| 宮城県 | 7月14日に募集を開始、8月14日の午後3時で締め切り(受付は終了) | 交付の決定のあとに導入し、実績の報告を経て翌年3月頃に支払い |
出どころ:茨城県「介護テクノロジー(介護ロボット・ICT)の導入支援事業について」(2026年10月28日更新)、宮城県「令和8年度介護テクノロジー導入支援事業補助金について」(2026年10月1日掲載)。県名は時期の違いを示すための例です。
同じ年度の同じ種類の補助金でも、締め切りが1か月半ほどずれています。全国を同じ時期にかけていると、ある県ではもう締め切りが過ぎていて「今年度の予算には入れられなかった」「直近の申請に間に合わない」と言われ、別の県ではまだ要項も出ていない、ということが起きます。
また、同じ県の中でも、別の支援事業の受付が秋に開くことがあります。茨城県では、導入したあとの定着を支援する別の事業の事前の協議が、2026年11月25日まで受け付けられています。「今年の補助金は終わった」と1つの事業だけで判断しないことも大切です。障害福祉の事業所向けにも、似た名前の別の補助があり、介護とは対象も時期も違います。営業リストは介護と障害福祉で分け、制度の話を混ぜないようにします。
金額の大きい設備は、補助金や交付金だけでなく、国の義務化の時期ともセットで検討されます。たとえば災害時の備えの計画づくりが義務になる時期には、関係する設備の話を聞いてもらいやすくなります。制度の締め切りと義務化の時期が重なる地域・施設から当たると、話が早く進みます。
POINT
制度の日程を手元に置き、次の「なぜ今」を早めに用意する
制度の話は、期限の前だけ効きます。期限を過ぎると「もう済んだ」で止まります。だから、今使っている一言が効かなくなる前に、次の一言を用意しておく必要があります。そのためには、制度がどんな順番で決まっていくのかを知っておくことが役に立ちます。
介護の報酬は、原則3年ごとに見直されます。次は2027年度の改定で、2026年4月27日の国の会議(社会保障審議会の介護給付費分科会)で検討の進め方が示され、夏からはテーマごとの話し合いが続いています。前回の2024年度の改定では、前の年の12月に改定率が決まり、2024年1月22日の会議で改定の案が示されました。
出どころ:厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会(第256回 2026年4月27日、第239回 2024年1月22日)、厚生労働省「令和6年度の診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬改定について」(2023年12月20日)
話し合いの時期
国の会議で、テーマごとに方向が話し合われる。中身はまだ決まっていない
「見直しに向けて準備を始める事業者が増えている」と、ほかの事業者の動きとして伝える
改定率と案が出る時期
前回は改定の前の年の12月に改定率、年明けに案が示された
「何が変わるか」を確かめたい事業所が増える。言い切りは案の中身の範囲だけ
施行の前後
施行に向けて書類や記録のやり方を直す
施行のあとは「もう済んだ」が増える。次の期限の話に切り替える
中身が決まる前の時期に、「改定でこう変わります」と言い切るのは危険です。決まっていないことを言い切ると、制度に詳しい管理者ほど信用しなくなります。中身ではなく、「来年度の報酬改定に向けて、記録のやり方を見直される事業者さんが増えています」と、ほかの事業者の動きとして伝えます。この形なら、決まっていない改定でも、言い過ぎずに電話した理由にできます。
報酬改定の間にも、期の途中の見直しや、国の仕組みの切り替えが入ります。2026年度は、介護職員の処遇改善の見直しが6月から施行されました。こうした期限のある話は、施行の数か月前から電話した理由として効きますが、施行から数か月たつと、受付で「もう申請したので大丈夫です」と言われ始めます。受付でこの言葉が増えてきたら、次の期限の話に替える合図です。
出どころ:独立行政法人福祉医療機構 WAM NET(2026年5月15日)、厚生労働省の令和8年度介護報酬改定の資料
NG 決まっていない改定を言い切る
「来年の改定で、この記録のやり方は使えなくなります」と、まだ決まっていない中身を断言する
→ 制度に詳しい管理者ほど「それはまだ決まっていないですよね」と警戒し、話が終わる
OK ほかの事業者の動きとして伝える
「来年度の改定に向けて、記録のやり方を見直される事業者さんが増えています」と、動きだけを伝える
→ 改定を気にしている事業所なら、続きを聞いてもらえる。法人の会議で複数の人が聞くアポになることもある
制度の日程は、営業リストと同じ場所に置いておきます。報酬改定の流れ、期の途中の見直しの施行月、都道府県の補助金の受付と締め切り。この3つを1枚の表にして、毎月「今月効く一言」と「そろそろ効かなくなる一言」を確かめます。法人の予算がいつ決まり、誰が決めるかという1年の流れは、介護・福祉で誰が決め、いつ予算が付くかにまとめています。
うまくいった例・いかなかった例
「もう申請した」が増えたところで、次の改定の話に切り替えた
状況
障害福祉の事業所に、処遇改善の見直しを「電話した理由」にしてかけていた。施行から数か月たつと、受付で「もう申請したので大丈夫です」と言われることが増えてきた
やったこと
処遇改善の話をやめ、「来年度の報酬改定に向けて、記録のやり方を見直される事業者さんが増えている」と、ほかの事業者の動きとして伝える一言に替えた。決まっていない中身は言い切らなかった
分かったこと
話せた先で続きを聞いてもらえる反応が多く、法人の会議で複数の職員が一緒に聞くアポにもなった。効かなくなった合図は受付の言葉に出る。合図が出たら、早めに次の期限に替える
多くの事業所がもう持っている商材で、補助金を入口にした
状況
ほとんどの事業所がすでに使っている種類の商材で、補助金と「生産性向上」の言葉を最初に出して電話していた
やったこと
補助金の話でアポは取れたが、「補助金は知っている」という断りも目立った。取れたアポに訪問した
分かったこと
相手は商談を「制度の情報をもらう場」と思っていて、挨拶で終わり、見積まで進んだアポはごく一部だった。補助金は電話の最後に、金額を試算する材料として出す形に変えた
まだ入っていない種類の商材で、補助金でアポは取れたが受注で止まった
状況
まだ多くの施設が入れていない種類の商材で、補助金はアポの入口として一番効いていた
やったこと
補助金をテーマにした電話と勉強会で、アポを積み上げた
分かったこと
交付の決定を待つ間に数か月から1年近く話が止まり、契約の段階で「補助金が出てから」と止まった。同じ補助金の枠をほかの機器と取り合うこともあった。補助金を前に出すのをやめ、補助金が無くても買う理由を商談までに固める形に切り替えた
まとめ:制度の話は「何を」「いつ」売るかで使い方を決める
補助金・報酬改定を電話で使うときに押さえること
- 同じ制度の一言でも、売る物・地域・時期で効き方が変わる。3つで分けて使う
- 相手がもう持っている種類の商材では、補助金は入口に出さず、最後に「実際いくらか」の材料にする
- まだ入っていない種類の商材では補助金は入口になるが、受注は交付の決定で止まる
- 補助金が無くても買う理由を、商談までに固める
- 補助金ありきの設備は、都道府県ごとの締め切りの列を営業リストに持ち、締め切りの近い県から週ごとにかける
- 決まっていない改定は、中身を言い切らず、ほかの事業者の動きとして伝える
- 受付で「もう済んだ」が増えたら、次の期限の話に替える合図
どれも土台にあるのは、制度の話を「いつでも使える決まり文句」ではなく、「この商材で、この時期にだけ効く一言」として扱うという考え方です。制度の日程と都道府県の締め切りを手元に置き、商材ごとに出す順番を決めておけば、同じ一言で切られることも、アポが受注の手前で止まることも減っていきます。
よくある質問
記録や請求の仕組みのように、ほとんどの施設が持っている商材でも、補助金の話はしない方がよいですか?
都道府県の補助金の締め切りは、どこで確かめればよいですか?
次の報酬改定の話は、いつから電話で使えますか?
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このような状況でしたら、
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- 介護・障害福祉の施設に、補助金の話から電話しても切られてしまう
- 補助金でアポは取れるのに、契約が「補助金が出てから」で止まってしまう
- 都道府県ごとの締め切りに合わせて、電話する地域と時期を組み立てたい
- 報酬改定に向けて、どの時期にどんな一言で電話すればよいか決めたい
- 外注したいが、制度の話を正しく扱える会社か不安
(外に任せるべきか、自社で直すべきかも含めて整理します)