受託加工・試作の仕事を取る新規開拓の方法|加工会社・受託製造の会社の方へ

受託加工・試作の仕事を取る新規開拓の方法

この記事でわかること

  • 受託加工・試作・受託製造の電話が「今の取引先で困っていない」で終わる理由
  • 発注する側で新しい外注先が探される「隙間」と、そこに合わせた営業リストの作り方
  • 呼ぶ部署・初めての電話で聞くこと・限られた営業リストを使い続けるやり方

このコラムは、次のような方に向けて書いています。

「加工の仕事を取りたくて装置メーカーに電話しても、『今の協力会社で足りている』で終わってしまう」
「うちは何でも加工できるのに、電話だとその良さがまったく伝わらない」
「狙いたいメーカーの数がそもそも少なく、営業リストがすぐに尽きてしまう」

受託加工・試作・受託製造の新規開拓は、製造業の営業の中でも特に入りにくい営業です。発注する側のメーカーには、何年も付き合ってきた協力会社がすでにいて、品質も納期も分かっています。そこに新しい会社が「加工の仕事をください」と電話しても、ほとんどの場合「今の取引先で困っていない」と返ってきます。

この記事は、メーカーから加工・試作・製造の仕事を取りたい会社の営業担当・責任者に向けて書いています。今の取引先を置き換えようとせず、発注する側で新しい外注先が探される「隙間の仕事」から入ると、話を聞いてもらえる相手は増えます。製造業への電話の基本(営業リストの作り方・最初の一言・断られたあとの動き方)は「製造業向けのテレアポ攻略法」にまとめているので、あわせて読んでみてください。

前提:発注する側は「今の取引先で困っていない」のが普通

最初にお伝えしたいのは、受託の仕事の電話で「今の取引先で困っていない」と言われるのは、自社の技術が劣っているからではないということです。発注する側から見ると、外注先を増やすこと自体に手間とリスクがあるからです。

発注する側のメーカーが新しい外注先を探すのに腰が重い理由は、主に3つです。

今の取引先で困っていない

品質・納期・付き合い方が分かっている協力会社が、すでにいる

「困っていない」が最初の答えになる

探す手間とリスクが重い

新しい会社を試すには、見積もり・試作・品質の確認が要る

失敗すれば、自分の責任になる

取引先が増えると管理も増える

外注先が1社増えれば、発注・支払い・品質の管理の手間が増える

増やすなら、それだけの理由がいる

3つめの管理の手間は、ここ最近さらに重くなっています。2026年1月1日から、これまでの下請法が「中小受託取引適正化法(取適法)」に改められました(公正取引委員会・中小企業庁)。従業員の数で対象を決める基準が加わり、受託する側から価格の協議を求められたのに応じないまま代金を決めることや、手形での支払いが禁じられるなど、発注する側の決まりが増えています。

受託する側の立場の弱さも、数字に表れています。中小企業庁の「価格交渉促進月間(2025年9月)フォローアップ調査」(2025年11月28日公表)では、上がったコストを取引価格に転嫁できた割合は、1次の取引先では54.7%なのに対し、4次以上の取引先では42.1%にとどまりました。取引の階層が深いほど、価格の話が通りにくいということです。

POINT

発注する側にとって、外注先を1社増やすのは「得」より先に「手間」です。受託の新規開拓は、今の取引先を置き換える話ではなく、今の取引先では埋まらない仕事を引き受ける話として組み立てます。

新しい外注先が探されるのは、今の取引先では埋まらない「隙間の仕事」

それでも、新しい外注先が探される場面はあります。製造業の現場の声を聞くと、ここ最近は次のような動きがはっきりしてきています。

ひとつは、協力会社の廃業です。簡単で量の多い仕事は海外に流れ、難しくて量の少ない仕事が国内に残るようになりました。これまで新しい協力会社は増やさない方針だったメーカーでも、「少量でも引き受けてくれる会社」を探すようになったという声が出ています。

もうひとつは、海外の工場から国内の工場へ生産を戻す動きです。国内の品質、円安によるコストの面での得、海外からの物流の不安などを理由に、国内で引き受けてくれる会社を探し始めたメーカーもあります。

こうした動きの中で新しい外注先が入れるのは、今の取引先では埋まらない「隙間の仕事」です。

隙間の仕事 発注する側で起きていること 電話での聞き方の例
特急の仕事 急ぎの案件が入ると、今の協力会社の手が埋まって納期が詰まる 「特急の案件が入ったとき、どの工程で一番詰まりますか」
小ロット・試作 量が少ない仕事は、今の取引先に頼みにくい・断られる 「量が少ない試作や部品は、今どちらに頼まれていますか」
新しい素材・加工 新しい製品で、今の協力会社が経験のない素材や加工が出てくる 「新しい素材の加工は、今の協力会社さんで対応されていますか」
撤退した工程 協力会社の廃業や撤退で、外注先が空いた工程がある 「最近、協力会社さんの廃業で困った工程はありませんか」
調達先を分けたい 1社に頼りきりで、止まったときの代わりがいない 「止まったときに代わりに頼める先は、決まっていますか」

大事なのは、「今の業者さんで困っていることはありませんか」と真正面から聞かないことです。長い付き合いの取引先への不満は、社外の人にはまず出てきません。特急・小ロット・新しい素材など、具体的な場面で聞いて初めて、困りごとがぽろっと出てきます。

発注する側が新しい外注先を探す目的には、ほかに「相見積もりの相手がほしい」というものもあります。ただし、それだけを入口にすると価格の比べ合いにしかなりません。入口はあくまで「隙間の仕事」に置き、相見積もりは話が進んだあとの選択肢の一つと考えておきます。

営業リストは用途・業界・拠点で分け、領域ごとに話を変える

受託の新規開拓でよくある失敗は、「何でも加工できます」と言える会社ほど、営業リストも話も広くなりすぎることです。電話で「加工のお仕事を受けております」と言われても、相手は自社のどの仕事に関係があるのか分かりません。

営業リストは、自社の加工がどの用途の、どの業界の、どんな拠点に役立つかで分けます。たとえばコネクタ、ゴムや磁石の部品、医療機器向けの部材のように、提案先が幅広い会社なら、領域ごとに営業リストと話を分けます。狙う相手の種類も、最終製品の装置をつくるメーカーだけでなく、部品をつくるメーカーや、受託製造をしている会社まで広げて構いません。どの種類からも、加工の仕事のアポは取れます。

NG 何でもできると伝える

「金属の加工全般を受けておりまして、小ロットから量産まで何でも対応できます」
→ どの会社にも言える一言で、「今の協力会社で足りている」で切られる

OK 相手の装置と自社の範囲を結ぶ

「御社の〇〇の装置を拝見しまして、その中の△△のような部品の加工を、小ロットから引き受けております」
→ 調べたうえでの電話だと伝わり、「どの部品の話か」で聞いてもらえる

OKの言い方の要は、相手のホームページで確かめた具体的な装置名を当てはめることです。装置名が出るだけで話の信ぴょう性が上がり、「適当にかけてきた電話ではない」という電話の理由にもなります。

領域ごとに話を分ける効果は、結果にも表れます。提案先が幅広い受託製造の会社で、3つの事業の領域ごとに話を分けたところ、取れたアポのうち商談として進むものの割合が上がりました。領域を混ぜたままの話は、どの相手にとっても「少しずれた話」になります。

加工の内容や設備から営業リストを絞る考え方は「製造業向けのテレアポ攻略法」でも触れています。受託の新規開拓では、その考え方を発注する側の装置や部品の側から当てはめるのがポイントです。

呼ぶのは装置開発・生産技術・購買。初めての電話で聞くことを決めておく

加工や製造を外に出すかどうかに関わるのは、主に装置の開発・設計、生産技術、購買・資材の部署です。中小のメーカーなら社長が決めることもあります。商談につながりやすいのは、この3つの部署を最初から想定して営業リストを作ることです。

もうひとつ決めておきたいのが、初めての電話で何を聞くかです。受託の仕事は、相手の外注の方針や選び方が分からないまま商談に行っても、話が噛み合いません。電話の目的はアポを取ることですが、次につなぐための質問だけは決めておきます。

初めての電話で聞いておくこと

今の外注の方針

どんな工程を外に出していて、新しい協力会社を探すつもりがあるか。増やさない方針でも、例外になる仕事がないか。

求める加工・組立の範囲

部品の加工だけか、組立まで頼みたいか。量・素材・精度の目安はどのくらいか。

協力会社を選ぶ基準

品質・納期・価格・近さなど、何を一番重く見て外注先を選んでいるか。

だれが、どう決めるか

設計・生産技術・購買のどこが外注先を決めるのか。見積もりはどの部署から依頼が出るか。

これらは、アポが決まったあとの「商談前の確認」として聞くのが基本です。日程を決める前に細かく聞き始めると、尋問のようになって断られやすくなります。日程が決まってから「当日のご提案を的確にするために、少しだけ伺えますか」と聞けば、相手も答えやすくなります。

どの部署のだれに当てるかの考え方は「工場の部署別の当て方」で詳しく取り上げています。中小のメーカーで社長が決める会社への入り方は「町工場・中小の金属加工への営業」にまとめています。

電話で聞かれることを先に用意し、深い話は商談に回す

受託の仕事の電話では、相手の技術の担当の方から、その場で具体的な質問が返ってくることがよくあります。答えに詰まったり、勢いで答えたりすると、そこで信用を失います。よく聞かれることは、電話をかける前に答えをそろえておきます。

納期
標準でどのくらいか、特急ならどこまで縮められるか
加工の可否
どの素材・大きさ・精度まで対応できるか。できないことも言えるようにしておく
小ロット
何個から引き受けるか。試作1個からでもよいか
見積もり
図面を受け取ってから、どのくらいで見積もりを出せるか

具体的な質問を受けたときの返し方の例

「ありがとうございます。標準的な納期と、小ロットの目安まではこの場でお伝えできます。御社の図面に合わせた細かい条件は、技術の者から正確にお答えしたいので、一度お打ち合わせの場をいただけませんか。来週ですと、木曜か金曜はいかがでしょうか」

ポイントは、答えられる範囲ははっきり答え、それより先は知ったかぶりをせずに商談に回すことです。電話で詳しく話しすぎると、商談で話すことがなくなり、アポの価値そのものが下がります。逆に、何も答えられないと「この会社に頼んで大丈夫か」と不安を持たれます。納期・加工の可否・小ロット・見積もりの流れの4つが答えられれば、電話としては十分です。

言わない方がよい言葉もあります。「新しい取引先を増やせます」「今よりずっと安くなります」は、どちらも「今の取引先で困っていない」「安さだけの会社」と受け止められやすい言葉です。技術の質問にどこまで電話で答えるかの考え方は「技術の分かる営業がいないとき」で取り上げています。

転送と不在が多い相手でも、営業リストを使い続ける

受託の新規開拓で狙う相手は、数が限られていることがよくあります。たとえば半導体の製造装置をつくるメーカーは、日本全体でもそれほど多くありません。営業リストを一度なめて終わりにすると、すぐに打つ先がなくなります。限られた営業リストを、どう使い続けるかが大事になります。

しかも装置メーカーは、別の工場への取り次ぎや、担当の方の不在がとても多い相手です。1回の電話で担当の方に届くことは少なく、何度もかけ直すことになります。だからこそ、1本ごとの電話で拾った情報を残しておきます。

記録が積み上がると、同じ会社の中に入口が増えていきます。ある工場の設計の方に断られても、記録に残した別の工場や別の部署に当てられます。営業リストの社数は増えなくても、1社の中の入口は増やせるということです。

資料の送付には特に注意します。受託の仕事では「まず資料を送ってください」と言われることが多く、送ったあとに断られる数がアポの数より多くなることもあります。資料は逃げ道ではなく、次の電話の布石です。かけ直すときは「資料の感想」を聞くのではなく、「お送りした資料の補足も含めて、30分ほどご説明できればと思いまして」と、日時の打診まで言い切ります。

一度断られた会社や、話が止まった会社への当て直し方は「失注先の掘り起こしと、既存客の広げ方」にまとめています。

うまくいった例・いかなかった例

受託加工・試作・受託製造の新規開拓で、何をして何が分かったかを紹介します。会社名は伏せ、どんな仕事を取りに行ったかだけを書いています。

うまくいった例

提案先の幅広い受託製造を、領域ごとに分けて当てた

状況

コネクタ、ゴムや磁石の部品、医療機器向けの部材など、提案できる先が幅広い受託製造の会社。だれに、何を、どの順番で当てるかが決まっていなかった

やったこと

用途・業界・拠点の条件で営業リストを分け、3つの領域ごとに話を切り分けた。納期・加工の可否・小ロット・見積もりの流れなど、聞かれそうなことを先に用意して、電話ごとの話のぶれを抑えた。相手のホームページで確かめた装置名を当てはめて入った

分かったこと

装置をつくるメーカーだけでなく、部品メーカーや受託製造の会社からも同じようにアポが取れた。領域ごとに話を分けたことで、取れたアポのうち商談として進むものの割合が上がった

うまくいった例

数の少ない装置メーカーに、接点を積み上げて当て続けた

状況

半導体の製造装置をつくるメーカーに向けた受託製造の案内。狙うメーカーの数が限られていて、営業リストを使い切らずに活かし続けることが課題だった

やったこと

装置開発・生産技術・購買を想定して営業リストを作った。初めての電話から、今の外注の方針、求める加工・組立の範囲、協力会社を選ぶ基準を聞く質問を組み込んだ。転送先・拠点・もう一度当てる糸口を、電話のたびに記録した

分かったこと

別の工場への取り次ぎや不在が多い中でも、次の打ち手がはっきりし、営業リストが尽きずに続けられた。数の少ない相手には、1社の中の入口を増やす記録が効く

いかなかった例

「まず資料を」と言われた先に、資料を送って待った

状況

加工の仕事の案内で、「まず資料を」と言われた先に多く資料を送った

やったこと

資料を送ったあと、時間を置いてかけ直した

分かったこと

資料を送った先から断られる数が、アポの数より多くなった。資料は送っただけではまず見てもらえていない。資料は次の電話の布石と考え、覚えているうちに数日でかけ直し、資料の補足を理由に日時の打診まで言い切る方がよい

3つの例から言えること

どれも、技術の良さを伝える前に「どの相手の、どの仕事に、どんな言葉で」を直しています。受託の新規開拓は、相手の側の装置と隙間の仕事に話を寄せるだけで、反応が大きく変わります。

まとめ:受託の新規開拓は「置き換え」ではなく「隙間」で決まります

受託加工・試作・受託製造の新規開拓は、今の取引先で困っていない相手から、隙間の仕事を引き受ける営業です。押さえるのは次の6つです。

受託加工・試作の新規開拓で押さえること

  • 発注する側にとって外注先を増やすのは「手間」。置き換えではなく隙間の仕事を引き受ける話にする
  • 特急・小ロット・新しい素材・撤退した工程など、具体的な場面で困りごとを聞く
  • 営業リストは用途・業界・拠点で分け、相手の装置名と自社の加工の範囲を結んで話す
  • 装置開発・生産技術・購買を想定し、外注の方針・範囲・選ぶ基準を聞く質問を決めておく
  • 納期・加工の可否・小ロット・見積もりの流れは先に答えをそろえ、深い話は商談に回す
  • 転送先・拠点・もう一度当てる糸口を記録し、限られた営業リストを使い続ける

受託の仕事は、技術がある会社ほど「何でもできます」と言いたくなります。けれども発注する側が探しているのは、何でもできる会社ではなく、今困っている仕事を引き受けてくれる会社です。相手の隙間に話を合わせることが、新しい取引の一番の近道です。

よくある質問

受託加工の新規開拓で、「今の協力会社で足りている」と言われたらどうすればよいですか?
今の取引先を置き換える話をやめ、今の取引先では埋まらない仕事に話を移します。「特急の案件が入ったとき、どの工程で一番詰まりますか」「量の少ない試作は、今どちらに頼まれていますか」のように、具体的な場面で聞くと困りごとが出てきやすくなります。協力会社の廃業や国内への生産の戻しで、少量でも引き受ける会社を探すメーカーも増えています。
受託製造や試作の営業電話は、メーカーのどの部署にかければよいですか?
装置の開発・設計、生産技術、購買・資材の3つを想定して営業リストを作るのが基本です。中小のメーカーなら社長が決めることもあります。日程が決まったあとに、今の外注の方針、求める加工・組立の範囲、協力会社を選ぶ基準、だれが決めるかを聞いておくと、商談が噛み合いやすくなります。
電話で納期や価格など技術的な質問をされたら、どう答えればよいですか?
標準の納期・加工できる範囲・小ロットの目安・見積もりの流れは、かける前に答えをそろえておき、その場ではっきり答えます。それより先の細かい条件は、知ったかぶりをせず「技術の者から正確にお答えしたい」と商談に回します。電話で詳しく話しすぎると、商談で話すことがなくなるので注意しましょう。

製造業での支援事例は「製造業の営業代行実績」にまとめています。

このような状況でしたら、

ぜひセグロスにご相談ください

  • メーカーから加工・試作・製造の仕事を取る新規開拓を始めたい
  • 電話しても「今の協力会社で足りている」で終わってしまう
  • 狙いたい装置メーカーの数が少なく、営業リストがすぐに尽きる
  • 資料を送った先から、なかなかアポにつながらない
  • 外注したいが、本当に結果が出るのか・情報の扱いは大丈夫か不安
まずは現状を伺い、「どこで詰まっているか」と「次の一手」を整理します。

(外に任せるべきか、自社で直すべきかも含めて整理します)