この記事でわかること
- 「製造業に強い」を、実績の社数ではなく、業界・規模・部署・拠点をどこまで分けて話せるかで見分ける方法
- 技術の話の線引き、頼む前に渡すもの、小さく始めて分けて試す進め方
- 「何件取れたか」だけで終わらない報告の受け取り方と、アポの先まで任せるときの確かめ方
このコラムは、次のような方に向けて書いています。
「営業代行の会社はどこも『製造業の実績あり』と書いていて、違いが分かりません」
「うちの商材は技術の話が多いので、外の人に電話を任せて大丈夫なのか不安です」
「前に頼んだときは、毎月アポの数だけ報告が来て、次に何を直せばいいのか分かりませんでした」
製造業向けの新規開拓を外に任せようとすると、営業代行の会社はどこも「製造業の支援実績が豊富」と書いています。けれども、同じ「製造業」でも、化学メーカーの研究所と、社員20人の金属加工の工場とでは、電話のかけ方がまるで違います。
この記事は、製造業向けの営業を外に頼もうとしているメーカーや、製造業向けの商材を持つ会社に向けて書いています。営業代行の選び方には、料金や契約期間など、どの業界にも共通する見方があります。それは「営業代行の比較で見るべき6つのポイント」にまとめているので、ここでは製造業ならではの見分け方と、頼むときの進め方に絞ってお伝えします。
前提:「製造業に強い」は、製造業をどこまで分けて話せるかで見分ける
「製造業の実績が豊富です」という言葉だけでは、その会社が自社の商材に向いているかは分かりません。製造業は、ひとつの業界と呼ぶには広すぎるからです。
国の産業の分け方では、製造業は食料品・化学・金属製品・電子部品・輸送用機械など24の業種に分かれています。2024年6月時点で、全国の製造業の事業所はおよそ22万、働く人はおよそ773万人です。業種が違えば、決める部署も、つながる時間も、相手が使う言葉も変わります。
出どころ:総務省「日本標準産業分類」(大分類「製造業」の中分類は24)、総務省・経済産業省「2024年経済構造実態調査 製造業事業所調査」(2024年6月1日時点。個人経営を除き、出荷額の大きい順に全体の9割を占める範囲の事業所。事業所数222,200、従業者数7,734,473人)
そこで、営業代行の会社と話すときは、「製造業をどこまで分けて話せるか」を確かめます。同じ質問をしても、答えの細かさで差がはっきり出ます。
POINT
「製造業に
強い」は、実績の社数では分かりません。業界・規模・部署・番号を、自社の商材に合わせて分けて話せるかで見分けます。営業リストの作り方や当てる相手の考え方は「製造業向けのテレアポ攻略法」で詳しく書いています。
技術の話を「どこまで電話で聞き、どこから持ち帰るか」を確かめる
製造業向けの商材を持つ会社が、外に頼むときに一番気にするのが技術の話です。「うちの製品は技術の理解が無いと売れないのでは」という声は、とてもよく聞きます。
ここで確かめたいのは、電話で技術の説明に勝とうとしていないかです。電話の目的は商談の約束を取ることです。濃い質問に、その場の勢いで答えてしまうと、商談の場で違っていたと分かり、依頼した会社の信用を落とします。反対に「技術者でないと電話もできない」と言う会社では、そもそも数が当たれません。
NG 線引きがあいまい
「技術のことも、こちらでしっかりご説明します」と、電話で何でも答えようとする。あるいは「技術の話は無理です」と、仕様を聞くことさえしない
OK 線引きが決まっている
用途・電圧や電流・大きさ・量・時期など、提案の入口に要る目安だけを聞く。それより深い話や料金は「詳しくは担当から」と持ち帰り、技術の分かる人がいる商談につなぐ
面談では「技術的な質問が来たら、どう返しますか」とそのまま聞いてみてください。持ち帰る線と、持ち帰った質問をどう商談につなぐかまで答えられる会社なら安心です。難しい商材では、営業代行の側が短い一次商談を受け持ち、詳しい話を聞きたい相手だけを技術者につなぐ、という分け方もあります。
電話でどこまで聞き、どこから持ち帰るかの具体的な線は「技術の分かる営業がいないときの製造業への売り方」にまとめています。
頼む前に、営業しない先と過去の接点を渡しておく
営業代行に頼むとき、営業リストも台本もすべて相手に任せたくなります。けれども製造業では、依頼する側の手元にしか無い情報が、結果を大きく左右します。頼む前に、次の4つを渡しておきます。
頼む前に渡しておくもの
営業しない先の一覧
今の取引先、商談中の相手、代理店が担当している先。社名を一覧で渡し、営業リストから先に外してもらう。外し漏れは、取引先からの苦情に直結します。
過去の接点
展示会の名刺、資料を送った先、検討して見送った先。新規の電話より話を聞いてもらいやすく、最初に当てる候補になります。
自社の展示会で質問が多かった業種
ブースで反応が良かった業種や用途は、営業リストと最初の一言の材料になります。営業担当の感覚でも構いません。
自社の言葉と、よく聞かれる質問
製品の呼び方、相手の現場で使われる言葉、商談でよく出る質問と答え。持ち帰る線を引くための材料にもなります。
特に気を付けたいのが、自社の動きとの重なりです。展示会の翌日に、そうとは知らずに同じ相手へ営業の電話をかけてしまい、「昨日ブースで話しましたよ」と言われることがあります。自社の営業担当やほかの協力会社と同じ相手にかけないよう、顧客の管理の仕組みを一緒に使うか、少なくとも「誰がどの相手を持つか」の決まりを最初に作っておきます。
メーカーの社内では、顧客や市場の情報の整理は、製造の現場ほど進んでいないことが多いものです。国の調べでも、デジタルの技術を使った業務の改善を「製造」で行う会社は約4割ある一方、「顧客や市場に関する情報の収集・分析」で行う会社は5.8%にとどまります。過去の接点が、営業担当ごとの手元に眠っている会社は少なくありません。
出どころ:労働政策研究・研修機構「ものづくり産業におけるDXと人材育成に関する調査」(2024年11〜12月調査、2026年4月公表。製造業11業種・従業員30人以上の企業。複数回答で「製造」39.9%、「顧客やマーケットに関する情報の収集・分析」5.8%)
眠っている接点の起こし方は「製造業の失注先の掘り起こし方と、別の工場への広げ方」で取り上げています。
いきなり全部を任せず、業界・規模・部署を分けて小さく試す
製造業では、同じ商材でも、業界によって反応がはっきり分かれます。古い設備を抱える業界では保全やノウハウの引き継ぎの話に反応が良く、最先端の業界の大手では、断られる前に受付で止まる。こうした違いは、かけてみるまで分かりません。
だからこそ、最初から大きく頼まず、分けて小さく試します。電話の部分から始めて、結果を見てから範囲を広げる進め方です。
最初の月
分けて試す
業界・規模・部署を2〜3通りに分け、同じ台本で当てる。どこで反応が良く、どこで止まるかを見る
2か月目
寄せて直す
反応の良い区分に数を寄せる。止まった区分は、呼ぶ部署・番号・最初の一言のどれを変えるかを決める
3か月目以降
広げる
大手や別の業界など、まだ当てていない区分に半分ほど振り分け、良さそうと分かってから寄せる
「大手だけに当たりたい」という希望もよく出ます。大手は母数が少ないので、大手だけに絞ると早く営業リストが尽き、同じ不在の先に何度もかけることになりがちです。絞るなら、母数と、かけ直しの管理まで最初に決めておくことが要ります。
試す期間の長さも、最初に合わせておきます。分けて試した結果がそろうには、少なくとも数か月はかかります。1か月で「取れない」と判断すると、どの区分が良かったのかが分からないまま終わってしまいます。
報告は「何件取れたか」より「どこで止まったか」で受け取る
外に任せたあと、一番不安になるのは中身が見えないことです。毎月「アポ何件」だけが届いても、次に何を直せばよいのかは分かりません。製造業の営業では、どこで止まったかを分けて返してもらうことが大事です。
断りの言葉を集めると、営業の材料としてだけでなく、市場の地図としても使えます。たとえば「大手はすでに対策を済ませている」という断りが続けば、狙うべきは中堅以下だと分かります。まだ世に出す前の製品なら、どの業界・規模で反応が良かったかが、そのまま売り出したあとの狙い先になります。
数字が上がったとき・下がったときに、理由が営業代行の側にあるのか、依頼した側(商材や営業リスト)にあるのかを分けて説明してもらえるかも確かめます。社内の上の人に説明するときに、この分け方がそのまま使えます。
アポで終わらせず、商談とその先まで見てもらえるかを確かめる
製造業の商材は、一度の商談で決まることはまずありません。会って話し、サンプルを出し、評価してもらい、ようやく採用される。何度も打ち合わせを重ねるうちに、量が増えて予算の話になる、という流れも普通です。
そのため、アポを取って終わりではなく、その先のどこまでを見てもらえるかを確かめておきます。
電話
担当者と話し、日程を決める。仕様の目安と決める人は、日程が決まったあとに聞く
一次商談
短い打ち合わせで、関心の中身と時期を確かめる。詳しく聞きたい相手だけを次に回す
技術の商談
技術の分かる人が入り、用途に合わせて詳しく話す。持ち帰った質問はここで答える
評価と社内
サンプルや試しの利用を経て、担当者が社内に説明できる材料をそろえる
営業代行によって、電話だけを受け持つ会社もあれば、一次商談まで、あるいは商談そのものまで受け持つ会社もあります。どちらが良いかは、社内に商談できる人がどれだけいるかで決まります。少なくとも、アポのあとに相手の検討の度合いを聞いて分けてくれるか、商談後の追いかけをどちらがやるかは、最初に決めておきます。
社内でアポを受ける側の準備も欠かせません。外から取ってきたアポは、相手がまだ強い関心を持っていないことが多く、問い合わせから来た相手と同じ商談をすると、話がかみ合いません。「なぜ電話を受けてくれたのか」を、アポの記録から読んでおくことが大切です。
うまくいった例・いかなかった例
製造業向けの営業を外に任せた場面で、何をして何が分かったかを紹介します。会社名は伏せ、商材の種類だけを書いています。
うまくいった例
開発中の材料で、評価してくれる相手を探した
状況
まだ世に出していない材料で、どの業界の誰が使い手になるのかも見えていなかった
やったこと
事業の中身・会社の規模・扱う製品の3つで成形・加工の会社を分けて営業リストを作り、最初の反応を見て優先順位を組み替えた。売り込みではなく「開発中の製品にご意見をいただく」形で当て、途中から大手の研究開発部門にも広げた
分かったこと
規模ごとの反応と断りの理由をまとめたことで、売り出したあとに狙う先を決める材料になった。分けて試し、分けて返してもらうと、アポの数以上のものが残る
うまくいった例
以前の外注で品質面の不安があった、工場向けの保全の仕組み
状況
以前に頼んだ外注先が、電話の品質の問題で早くに止まった経緯があり、依頼する側が強く警戒していた
やったこと
経験の浅い人を電話に入れず、つながった電話の録音をすべて渡した。工場の受付は夕方に閉まり、技術の担当は夕方以降に事務所へ戻るので、営業リストの種類ごとにかける時間を分けた
分かったこと
録音で中身が見えると、依頼する側の不安が消え、続けて任せてもらえた。製造業では、言い方の品質と、相手の1日に合わせた動きの両方が見られている
いかなかった例
データを使う仕組みを、大手だけに絞って当てた
状況
依頼する側の「大手に当たりたい」という希望に合わせ、化学の大手だけに絞った営業リストで始めた
やったこと
限られた大手に繰り返しかけ、不在の先にも何度もかけ直した
分かったこと
母数が少なく、早くに営業リストが尽きた。大手に絞るなら、母数とかけ直しの管理まで先に決め、中堅にも並行して当てて比べる必要があった
3つの例から言えること
どれも、電話の上手さより先に、どう分けて試し、何を返してもらうかを決めたかどうかで結果が分かれています。
まとめ:製造業の営業代行は「分けて試し、分けて返してくれるか」で選びます
製造業に強い営業代行を選び、頼むときに押さえること
- 「製造業に強い」は社数ではなく、業界・規模・部署・番号を分けて話せるかで見る
- 技術の話は、電話で聞く目安と持ち帰る線が決まっているかを確かめる
- 営業しない先、過去の接点、展示会で反応が良かった業種、自社の言葉を先に渡す
- 大きく頼まず、区分を分けて小さく試し、反応を見て寄せる
- 報告は区分ごとの結果、止まった場所、断りの言葉、番号の出どころ、録音で受け取る
- アポの先の一次商談・技術の商談・追いかけを、どちらが受け持つかを決めておく
製造業は、同じ商材でも業界や規模で結果が大きく変わる業界です。最初から正解を知っている営業代行はいません。分けて試し、分けて返してくれる相手なら、外に任せた数か月が、そのまま自社の営業の地図になります。
よくある質問
製造業に強い営業代行かどうかは、どこで見分ければよいですか?
実績の社数ではなく、「どの業界・規模から当てるか」「どの部署を呼ぶか」「どの番号にかけるか」を、自社の商材に合わせて分けて話せるかで見分けます。「製造業全体に上から順に」「品質保証部で呼びます」と一律に答える会社より、会社ごとに違う前提で話す会社の方が、製造業の電話に慣れています。
技術の分かる人がいない営業代行に、製造業向けの電話を任せても大丈夫ですか?
電話の目的は商談の約束を取ることなので、技術者でなくても任せられます。大事なのは、用途や仕様の目安など電話で聞くことと、料金や深い技術の話など持ち帰ることの線が決まっているかです。持ち帰った質問を、技術の分かる人がいる商談でどう答えるかまで、最初に決めておきます。
製造業向けの営業代行は、どのくらいの期間で判断すればよいですか?
業界・規模・部署を分けて試し、反応を見て寄せるまでには、少なくとも数か月はかかります。1か月で判断すると、どの区分が良かったのかが分からないまま終わりがちです。最初に試す区分と、続けるか見直すかを決める目安を、依頼する前に合わせておくと安心です。
製造業での支援事例は「製造業の営業代行実績」にまとめています。
製造業の新規開拓を任せたい方は 営業代行事業の詳細はこちら