この記事でわかること
- 産業機械・設備の電話が「今のもので足りている」で終わる理由
- 知名度が低い前提の入り方と、装置をつくる会社・工場で使う会社の分け方
- 入れ替えの時期のつかみ方と、自動化機器の商社・設備会社を通して売るときの決めごと
このコラムは、次のような方に向けて書いています。
「大手のメーカーの機器がもう入っているので、と言われて話が終わってしまう」
「うちの社名を言っても、相手はまず知らない。何から話せばいいのか分からない」
「商社や設備の会社に当たると関心は持ってもらえるのに、担当者がいつも外出していてつかまらない」
工場で使う機械・装置・センサー・制御の機器など、設備を売る営業には、ほかの商材にはない壁があります。相手の工場では、たいてい大手のメーカーの機器がすでに動いていて、こちらの会社の名前はまず知られていません。そのうえ、設備は止められない物なので、良さそうだからといってすぐに入れ替えてはもらえません。
この記事は、メーカー・工場に機械や設備を売る会社の営業担当・責任者に向けて書いています。知名度で勝負しようとせず、「知られていない」ことを前提に入り方・当てる相手・時期を組み立てると、話を聞いてもらえる相手は増えます。製造業への電話の基本(営業リストの作り方・最初の一言・断られたあとの動き方)は「製造業向けのテレアポ攻略法」にまとめているので、あわせて読んでみてください。
前提:設備の営業は「今動いている物」の入れ替えを狙う仕事
最初にお伝えしたいのは、設備の営業で「今のもので足りている」と言われるのは、商材が劣っているからではないということです。相手の工場では、すでに何かが動いています。設備の営業は、その動いている物を、いつ、何に入れ替えてもらうかを狙う仕事です。
公的な調べでも、中小の製造業が設備にお金を使う目的は、入れ替えが一番です。日本政策金融公庫の「第134回中小製造業設備投資動向調査」(2026年6月25日公表、従業員20〜299人の製造業が対象)では、2025年度の設備投資の目的で一番多かったのが「更新、維持・補修」の35.2%で、「能力拡充」の30.3%、「省力化・合理化」の14.7%が続きます。新しく何かを足すより、今ある物を入れ替えたり直したりするお金の方が大きい、ということです。
売る側も多い業界です。経済産業省・総務省の「2024年経済構造実態調査」(製造業事業所調査、2024年6月1日時点)では、機械や装置をつくる生産用機械器具製造業の事業所が、製造業全体の10.5%を占めています。相手の工場には、大手を含めて多くの会社から設備の案内が届いていると考えておきます。
もう動いている
たいていの工場では、大手のメーカーの機器がすでに入っている
「今のもので足りている」が最初の答えになる
名前を知らない
こちらの会社名を聞いても、相手は何の会社か分からない
名乗った時点で「よく分からない営業」に分けられる
すぐには止められない
設備を入れ替えるには、ラインを止める時期と予算がいる
良さが伝わっても、決まるのは次の入れ替えの時期
POINT
設備の営業は「今すぐ入れ替えてもらう電話」ではなく、次の入れ替えのときに候補に入れてもらう電話です。名前を知られていない前提で、入り方と時期を組み立てます。
営業リストは「装置をつくる会社」と「工場で使う会社」に分ける
設備の売り先には、大きく2つの種類があります。ひとつは、自社の装置に部品や機器を組み込む装置をつくる会社。もうひとつは、自社の工場で設備を使う工場を持つ製造業です。同じ機器を売る場合でも、この2つは呼ぶ部署も話の中身もまったく違います。営業リストは最初から分けて作ります。
もうひとつ大事なのが、営業リストに対象外の会社が混ざっていないかを確かめることです。たとえば包装のラインに入れる装置なら、「物流」「食品」と業種でまとめた営業リストには、使い道のない会社が多く混ざります。預かるだけの倉庫は「うちは貼らない」、荷主側で済ませている会社は「入ってくる時にはもう済んでいる」、作業の量が少ない会社は「手作業で足りている」と返ってきます。
絞り直すときの手がかりは、相手のホームページです。ラインや作業場の写真が載っている会社は、自社で製造や加工をしている可能性が高く、優先して当てます。それでも分からない会社は、工場や自社の倉庫に電話して「自社で加工から包装・出荷まで行っているか」「その中にこの工程があるか」を確かめます。
法律や決まりで工程が厳しく管理されている業界も要注意です。医薬品のように、ライン一式をまとめて納める会社から導入していることが多い業界では、単体の装置をメーカーに直接売り込むより、その業界のラインの実績がある設備会社を開拓する方が近道です。
知名度が低い前提で、「何の会社か」を一言で伝えて入る
知られていない会社が名乗ると、相手は「何の会社か」を考える前に断ります。だから最初の一言で、相手がすでに知っている物を物差しにして、何の会社かを伝えます。たとえば「国内の大手さんと同じ領域の、センサーや制御の機器を扱っている会社です」と言えば、相手は頭の中の棚のどこに置けばよいかが分かります。
NG 自社の説明から入る
「〇〇という会社で、△△という製品を開発しておりまして、特長は……」
→ 知らない会社の知らない製品の説明が続き、「今のもので足りている」で切られる
OK 知っている物を物差しにする
「国内の大手さんと同じ領域の機器を扱っておりまして、一度ご挨拶に伺えればと思いまして」
→ 何の会社かが一言で分かり、「挨拶なら」と受け止めてもらいやすい
入り方にも型があります。ポイントは3つです。
ひとつめは、相手が言いそうな断りを先に言っておくことです。「おそらく、すでにお使いの機器があると思うのですが」と前に置くと、「もう入っている」という理由では断りにくくなります。
ふたつめは、使い方を一言で言える形にしておくことです。機能をいくつも並べるより、「〇〇するだけで管理できる」のように一言で言える価値の方が、知らない会社の話でも頭に入ります。
みっつめは、アポのハードルを下げることです。「導入をご検討ください」ではなく、「ご担当の方のお眼鏡にかなうか、ご意見をいただきたい」「ご挨拶に伺いたい」と、相手の負担が軽いお願いにします。
知名度が低い前提での入り方の例
「お世話になっております。突然すみません。おそらく、すでに大手さんの機器をお使いだと思うのですが、同じ領域の機器を扱っておりまして、御社の〇〇のラインを拝見してご連絡しました。今すぐ入れ替えていただくお話ではなく、次に見直されるときの選択肢の一つとして、一度ご挨拶に伺えればと思いまして」
信用の足しになる材料も用意しておきます。ホームページがきちんとしていると、電話のあとに調べた相手から「よく分からない会社だけれど、ちゃんとしていそうだ」と受け止めてもらえます。名の知れた機械メーカーや機器の会社と組んだ実績があれば、工場の管理を進めている会社には受け入れられやすくなります。
それでも「もう入れているので」と言われることは多くあります。設備の営業で一番強い断りです。ここで利点を並べて押し返すと、電話はそこで終わります。「今後の選択肢の一つとして」「費用の面も含めて、情報交換だけでも」と、さらに軽いお願いに変えてアポにつなげます。押すのは商談の場で十分です。
本社で止まらず、工場で設備を見ている人まで下りる
工場で使う設備の話は、本社にかけても担当がいないことがほとんどです。本社の代表番号では「工場のことは工場で」と流されるか、受付で止まります。電話は本社から工場へ、2段で当てる前提で組みます。
本社で特定
本社の受付では、「どの部署・どの工場が設備の導入を見ているか」を聞くことだけに集中する
工場の番号
案内された工場・部署の番号と、担当の方の名前を聞く。分かった番号は再架電の一番上に置く
戻り時間
不在なら、戻りの時間と、いつも事務所にいる時間帯を聞いて、その時間にかけ直す
伝言の一言
伝言を頼むときは、「止まる時間を減らした例がある」など、担当の方が反応しやすい言葉を入れる
工場で設備を見ている人は、日中は現場に出ていることが多い相手です。保守やサービスの部署は特に、客先や現場を回っています。つながりやすいのは、午前の現場に入る前、昼明け、夕方の戻りです。工場の受付は17時で閉まる所が多い一方、技術の部署は17時まで現場にいて、そのあと事務仕事に入る動きがよく見られます。営業リストの性質ごとに、かける時間帯を分けておきます。
担当の方とつながって関心が高そうなら、当日か翌日のうちにもう一度追いかけます。設備の話は、時間が空くと「今のもので足りている」に戻りがちだからです。生産技術・設備保全・生産管理など、どの部署に当てるかの考え方は「工場の部署別の当て方」で詳しく取り上げています。
入れ替えの時期を聞き、その少し前にもう一度当てる
設備は、良さが伝わっても、決まるのは次の入れ替えのときです。だから、電話で一番大事な情報は「今の機器にどれだけ満足しているか」ではなく、「次はいつ見直すか」です。入れ替えの時期は、相手の側にいくつかの決まった形で現れます。
今の機器
更新・見直しの時期
今の機器の契約や寿命が来る、部品の交換が増えてきた。入れ替えのときに、信頼できる製品を探し始める
止める時期
定期の修繕・点検
設備を止めて修繕する時期に合わせて入れ替えが決まる。何年も先の修繕の時期が、検討を始めるきっかけになる
予算の後
予算取りが終わった後
来期の予算取りを終えたあとの追加の検討は、枠の縛りが少なく、柔軟に動いてもらえることがある
電話では、断られても「次に見直されるのは、いつ頃になりそうですか」とだけ聞いて、その少し前にかけ直す日を営業リストに残します。「今のもので足りている」は「今は入れ替える時期ではない」という意味であることがほとんどです。
相手の関心の向きも、時期によって変わります。工場の止まりを減らす、部品の交換を前もって行う、といった話に関心を持つ担当の方は、ここ最近増えています。一方で、目新しさを売りにしていた分野は、似た製品が増えると珍しさが薄れていきます。古い設備を抱えやすい業界ほど、設備の止まりを防ぐ話やノウハウの引き継ぎの話に反応が良い、という傾向もあります。
大手が来年度の予算を組む前に当てる考え方は「製造業向けのテレアポ攻略法」でも触れています。設備の営業では、それに加えて、一社ごとの「次の見直しの時期」を一行ずつ記録しておくことが、そのまま来年のアポの種になります。断られた会社にもう一度当てるやり方は「失注先の掘り起こしと、既存客の広げ方」にまとめています。
自動化機器の商社・設備会社を通して売る
自社の機器を、工場の自動化機器を扱う商社や、ラインをまとめて納める設備会社を通して売る道もあります。商社や設備会社は、実際に設備を使う工場より技術の利点への関心が高く、アポやウェブでの面談にもつながりやすい相手です。お客様に提案する選択肢が増えることは、彼らにとっても得になるからです。
一方で、つかまえるのに時間がかかる相手でもあります。「担当者が不在」「営業は全員外出中」「社長が兼任していて不在」という返事がとても多く、担当の方にたどり着くまでが長くなりがちです。
商社・設備会社に当てるときの決めごと
最初に窓口を確かめる
初めての電話で「設備の導入はどの部署の、どなたが見ていらっしゃいますか」と必ず聞き、部署・名前・直通や携帯の番号まで残す。
外出の型を聞く
戻りの時間と、いつ事務所にいることが多いかを聞く。午前の外出前や昼明けなど、つかまる時間にかけ直す。
伝言に具体例を入れる
伝言を残すときは「処理を速くした例」「止まる時間を減らした例」など、相手が反応しやすい中身を一言入れる。
業界の実績で選ぶ
ライン一式で導入される業界には、その業界のラインの実績がある設備会社を優先して当てる。
商社や設備会社を通すと、その先の工場の数だけ売れる見込みが広がります。ただし、彼らが自分から積極的に売ってくれるとは限りません。最初の面談では、どんなお客様の、どんな困りごとに出せる機器かをはっきり伝え、提案しやすい形の資料を渡しておきます。
一社一人で終わらせず、施策ごとに結果を分けて見直す
設備の営業では、1つの会社に1回、1人だけかけて終わりにするのはもったいないやり方です。装置をつくる会社には設計の担当が何人もいて、工場を持つ会社には工場がいくつもあります。一度アポを取った会社は、同じ会社の別の担当・別の工場への入口になります。
別の設計の担当へ
過去にアポを取った会社の、別の設計の担当に当たる
社名を知ってもらえている分、話に入りやすい
反応した人を追う
案内のメールを開いた人や、資料を請求した人を電話で追いかける
関心がはっきりしている相手から当たれる
施策ごとに分ける
新規・別の担当・反応した人など、施策を分けて結果を毎月見る
効く施策にかける量を寄せられる
中でも、別の設計の担当に当たるやり方は、ほかの施策よりアポになる割合がはっきり高くなりやすいものです。一度話した会社の中では、こちらの会社名がすでに「何の会社か分かる名前」になっているからです。
施策を分けて結果を見るのは、同じ1件のアポでも、どの施策から生まれたかで次の打ち手が変わるからです。新規の電話、別の担当への電話、反応した人への電話を1つにまとめて数えると、どこにかける量を増やせばよいかが見えなくなります。施策ごとにアポの割合を毎月並べ、配分を見直す。この繰り返しで、限られた架電の量を一番効く所に寄せられます。
訪問で商談する設備の営業なら、営業担当の方の訪問の予定に合わせて、同じ地域の会社をまとめて日程を入れると移動のむだも減らせます。技術の深い質問が出たときにどこまで電話で答えるかは「技術の分かる営業がいないとき」で取り上げています。
うまくいった例・いかなかった例
産業機械・設備の新規開拓で、何をして何が分かったかを紹介します。会社名は伏せ、商材の種類だけを書いています。
うまくいった例
知名度の低いセンサー・制御の機器を、装置をつくる会社と工場に分けて当てた
状況
工場の自動化に使うセンサー・制御の機器の案内。国内では大手の製品が広く使われていて、社名を言っても何の会社か伝わらなかった
やったこと
営業リストを「装置をつくる会社」と「工場を持つ製造業」に分けた。トークは知名度が低い前提で「国内大手と同じ領域の機器」と伝え、「ご挨拶に伺いたい」と入った。本社で止まらず地方の工場の直通番号を聞き、過去にアポを取った会社の別の設計の担当にも当たった
分かったこと
別の設計の担当に当たる施策は、ほかの施策よりアポになる割合がはっきり高かった。施策ごとの結果を毎月並べ、かける量の配分を見直し続けたことで、長く続けられる形になった
うまくいった例
大手の製品が広く使われる中で、新しい読み取り機器を工場単位で案内した
状況
製造の現場で使う読み取り機器の案内。国内では大手の製品が広く使われていて、新しい製品の名前を知ってもらうところから始める必要があった
やったこと
本社には担当がいないことが多いため、工場・事業所の単位で生産管理の部署を呼び出した。トークは製品の仕様より、部品の追跡や不良品の選り分けといった現場の用途ごとの困りごとから入り、資料を送るのとあわせて部署・担当の方・連絡先を聞いた
分かったこと
計画よりずっと早く、見込みのある相手が集まった。知られていない製品でも、工場の単位で、用途の困りごとから入れば話を聞いてもらえる
いかなかった例
包装ラインの装置を、業種でまとめた営業リストに当てた
状況
包装のラインに入れる装置の案内。物流・食品・医薬品などの業種でまとめた営業リストにかけた
やったこと
営業リストの並びのまま、同じトークで当てた
分かったこと
預かるだけの倉庫や、作業の量が少ない会社など、使い道のない会社が多く混ざっていた。医薬品はライン一式で導入する会社が多かった。自社で製造している会社に絞り、ラインの写真で優先を付け、ライン一式の業界は実績のある設備会社から当たる方がよい
3つの例から言えること
どれも、製品の良さを伝える前に「何の会社か分かる入り方」と「使い道のある相手」を直しています。設備の営業は、知られていない前提で入口を組み直すだけで、反応が大きく変わります。
まとめ:設備の営業は「知られていない前提」で組み立てます
産業機械・設備の営業は、すでに動いている物の入れ替えを、名前を知られていない会社が狙う仕事です。押さえるのは次の6つです。
産業機械・設備の新規開拓で押さえること
- 設備の電話は「今すぐ入れ替えてもらう電話」ではなく、次の入れ替えで候補に入る電話
- 営業リストは装置をつくる会社と工場を持つ会社に分け、使い道のない会社を外す
- 知っている物を物差しにして「何の会社か」を一言で伝え、軽いお願いでアポにする
- 本社では担当の工場・部署の特定に絞り、工場の番号と戻りの時間を聞いて当てる
- 断られても「次に見直すのはいつか」を聞き、その少し前にもう一度当てる
- 商社・設備会社では最初に窓口を確かめ、別の担当・施策ごとの結果まで見て広げる
設備の営業は、知名度のある会社だけが勝てる営業ではありません。知られていないことを前提に、入り方と当てる相手と時期を組み立てる。その積み重ねで、次の入れ替えのときに声がかかる会社になれます。
よくある質問
知名度の低い会社が、産業機械や設備のテレアポで話を聞いてもらうにはどうすればよいですか?
自社の説明から入らず、「国内の大手さんと同じ領域の機器を扱っている」のように、相手が知っている物を物差しにして何の会社かを一言で伝えます。「すでにお使いだと思うのですが」と先に言っておき、「ご挨拶に伺いたい」「ご意見をいただきたい」と軽いお願いでアポにつなげます。製品の良さを押すのは商談の場で十分です。
「今の機器で足りている」と断られたら、どうすればよいですか?
設備の営業で一番多い断りですが、多くは「今は入れ替える時期ではない」という意味です。押し返さずに「今後の選択肢の一つとして」と軽いお願いに変えるか、「次に見直されるのはいつ頃ですか」とだけ聞いて、その少し前にかけ直す日を残します。定期の修繕や今の機器の更新の時期が、検討が始まるきっかけになります。
工場の自動化機器を扱う商社に営業するときのコツはありますか?
商社や設備会社は技術の利点への関心が高い一方、担当の方が外出していることが多い相手です。最初の電話で「設備の導入はどの部署の、どなたが見ていらっしゃいますか」と聞き、名前と直通の番号を残します。戻りの時間を聞いてつかまる時間にかけ直し、伝言には相手が反応しやすい具体例を一言入れます。
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