新規事業の最初の導入先の探し方|試しの導入に協力してくれる会社を探す方へ

この
- 最初の1社が、売上以上に事業の評価を決めてしまう理由と、協力してくれやすい会社の見分け方
- 電話で「ご意見をいただく」形から入り、初回の商談で試しの導入へ進める頼み方
- 試しを始める前に決めておくことと、試しで終わらせず内諾まで進め、2社目・3社目へつなげる進め方
このコラムは、次のような方に向けて書いています。
新規事業でいちばん苦しいのは、最初の1社が決まるまでの時間です。製品やサービスはできていても、実績がないので「どこで使われていますか」「ほかの会社はどうしていますか」と聞かれるたびに、話が止まります。
そこで多くの担当者が考えるのが、試しの導入や実証、サンプルの評価に協力してくれる会社を探すことです。ただ、やみくもにお願いして回っても、引き受けてくれる会社はなかなか見つかりません。見つかったとしても、試しが終わったところで話が途切れ、導入に進まないことがよくあります。
この記事は、事業会社で新規事業や新しい商品を担当している方に向けて、最初の導入先になってくれる会社の見分け方、電話での当て方と頼み方、試しの導入を始める前に決めておくこと、そして試しで終わらせずに次へつなげる進め方をまとめます。新規事業の検証そのものの考え方は「新規事業テストマーケティングのやり方」にまとめているので、あわせて読んでみてください。
前提:最初の1社は、売上より「事業の評価」を決める
最初の導入先を探すとき、つい「まず1件売上を立てたい」と考えがちです。けれども新規事業では、最初の1社は売上の1件以上の意味を持ちます。
社内では、新規事業は数か月ごとに「続けるか、見直すか」を問われます。そこで1社でも入っていれば事業として前に進み、1社も入っていなければ、厳しく見直されることになりがちです。実際に、新規事業の担当者からは「大きく売るより、まず1件。売れることを示して、実績をつくりたい」という声がよく聞かれます。最初の1社には、次の3つの意味があります。
社内の評価
続けるかどうかの判断材料になる
「売れることを示せた」かどうかで、事業の見られ方と次の予算が変わる
次の
「どこか入っていますか」に答えられる
前例がない間は、検討の入口で止まる相手が多い。1件あるだけで話の入りが変わる
売り方の材料
導入が始まる条件が分かる
誰が動き、何がそろえば導入が始まったか。2社目からの売り方の型になる
とくに、医療機関や自治体のように「近くの同じような所が使っていれば使う」という業界では、第1号があるかどうかで、その後の営業のしやすさが大きく変わります。前例のない間は「ほかではどうしていますか」と聞かれるたびに止まり、1件できた瞬間に、その問いへの答えが手に入るからです。
だから最初の1社は、「たまたま引き受けてくれた会社」で済ませず、選んで、設計して、次につなげるものとして考えます。
POINT
協力してくれやすい会社は、困りごと・試す力・広がる先で見分ける
試しの導入に協力してくれる会社には、共通する特徴があります。製品への興味の強さよりも、相手の側に「試す理由」と「試せる体制」があるかどうかで決まることが多いのです。電話の前に、候補を次の4つで見ておきます。
| 見ること | どこで見分けるか | なぜ大事か |
|---|---|---|
| 困りごとが強い | 似た物を |
困りごとが |
| 新しい |
研究開発の |
試すことに |
| 予算が付く | 公的な |
新しく |
| その先に広がる | 業界で |
1社の |
ここで大事なのは、外から見て確かめられる合図だけで選ぶことです。「新しい物が好きそう」「困っていそう」という印象は、営業リストの条件になりません。似た物をすでに使っているか、実証の実績が公開されているか、補助の対象になっているか。ホームページや公開情報で確かめられる合図に置き換えて、候補に印を付けていきます。
会社の大きさは決め打ちしません。小さすぎる会社は試す余力がないことが多く、大手は試しを引き受けても決裁まで時間がかかります。中堅も候補に入れて、反応で見比べます。
知り合いの会社や、関係の近い取引先に最初に頼みたくなる気持ちも自然です。ただ、関係の近い相手は悪く言いにくく、試しは引き受けてくれても、評価が甘くなりやすいことは押さえておきます。近い相手に頼むとしても、それだけで「売れる」と決めず、関係のない相手でも同じ反応が出るかを確かめます。
候補は絞りすぎずに広く当て、反応で順番を組み替える
試しの導入先を探すときは、候補を最初から数社に絞り込まず、広く当てて、優先の目安だけを付けておくのが基本です。数社に絞って全部断られると、相手が悪かったのか、頼み方が悪かったのかが分からないまま、時間だけが過ぎるからです。
当ててみると、机の上の想定とずれることはよくあります。たとえば材料を売る場合、どの素材を扱っているかで候補を絞るより、どんな加工をしているかで絞り直したほうが話が進んだ、ということがあります。「何を扱っているか」より「何をしているか」で候補を見直すと、試しに向いた相手が見えてくることがあります。区分の作り方と、売り文句の並べ方は「新規事業で売る相手の決め方と売り文句の試し方」にまとめています。
呼び出す相手も、最初から決め打ちしません。営業や購買の担当は「うちには選ぶ権限がない」と言いやすく、そこで止まりがちです。実際に使う現場や、開発・製造の担当を名指しで呼ぶほうが、試しの話は進みやすくなります。新規事業の窓口の部署を呼ぶときは、新規事業開発部、事業開発部、新規事業推進室、イノベーション推進部など、呼び名の候補をいくつか受付に出して、選んでもらうとつながりやすくなります。
もうひとつ見落としやすいのが、選ぶのが導入先の会社ではない業界があることです。施設に出入りしている清掃や保守の会社が製品を選び、施設の側に「これを使いたい」と上げる、という流れの業界もあります。その場合は、導入先に直接当てるのと並べて、導入先に持ち込んでくれる会社にも当てます。
電話では「ご意見をいただく」形で入り、頼むときは本気で頼む
実績のない製品やサービスで、いきなり「導入をご検討いただけませんか」と電話しても、相手は身構えます。まだどこにも入っていない物を、検討する理由がないからです。最初の電話は、売り込みではなく「ご意見をいただきたい」という形で入ります。
NG 導入の
「新しいサービスを始めました。ぜひ御社でご導入をご検討いただけないでしょうか」
→ 実績のない物の検討を頼まれても、断るしかない。「営業ではありません」と言い添えるのは、うそになるのでやめる
OK 意見を
「何か買ってください、というお話ではなく、新しく始める事業について、実際にお仕事をされている方のご意見を伺いたくてご連絡しました」
→ 新規事業であることも、目的も正直に伝える。意見を言うだけなら引き受けやすく、その後の質問にも答えてもらいやすくなる
入口は「ご意見をいただく」形でも、こちらの姿勢まで軽くするわけではありません。会っていただく打診は本気で取りにいき、断られたあとも、聞ける話は聞いておく。この2つを両立させます。断られた直後でも「せっかくおつなぎいただいたので、勉強のために少しだけ伺えますか」と添えると、今どうしているか、何に困っているかを話してくれる方がいます。
電話でのお願いの言い方の例
開発中の材料や部品のように、研究開発の部署に評価をお願いする場合の当て方は「研究開発・設計部門への営業方法」で詳しく書いています。研究開発の部署は社外に情報を出したがらないので、初回の打ち合わせで守秘の約束を結ぶところまでを目的にするのも一つの進め方です。
初回の商談のゴールは、受注ではなく「試しへ進むこと」に置く
会えることになったら、初回の商談のゴールを決めます。ここで「受注」を目標にすると、価格・契約・社内の承認と論点が一度に増え、相手の検討の負担が重くなります。新しい物を初めて聞いた相手が、その場で導入を決められることはまずありません。初回は受注を決める場ではなく、試しの導入へ自然に進む場として組み立てます。
NG 受注を
価格・契約・承認の話が一度に出て、相手の負担が重い。「一度社内で検討します」で止まりやすい
OK 試しへ
冒頭で「お役に立てそうなら、試しのご案内もしたい」と目的を伝える。相手は判断の範囲が狭いぶん、前に進みやすい
NG
相手に考えさせる聞き方で、答えが出にくい。「社内で考えておきます」で終わる
OK 候補を
「この部署・この拠点・この業務のうち、どこで試すのがよさそうですか」と、検討の中身を絞って聞く
試しを頼みやすくするこつは、今のやり方を変えてもらう話にしないことです。「今のものからすぐ切り替えてください、ではなく、一部で並べて使ってみてください」と伝え、少ない人数・限られた期間・一部の業務での実証として提案します。相手が気にしそうなことには、試しの運用の決めごとで答えます。
実績のない新規事業ほど、機能の細かい説明より、なぜこの事業を始めたのか、なぜ今この困りごとを解決する必要があるのかを先に伝えます。機能の説明は忘れられても、事業を始めた理由は覚えてもらえます。実績のない間は、それが相手にとっての信用の拠り所になります。
会った相手が業務に直接関わる方でなければ、担当の部署や担当の方を紹介していただくことをゴールに切り替えます。
初回の商談の締めの言い方の例
試しの導入を頼む前に決めておくこと
試しを引き受けてもらえそうになったら、始める前に条件を言葉にしておきます。ここをあいまいにしたまま始めると、終わったあとに「それで、どうしますか」が話せず、試しが試しのまま終わります。決めておくことは次の6つです。
試しの
期間を区切る
いつからいつまで試すかを決める。相手の希望より長くかかることが多いので、延びた場合の扱いも先に話しておく。
範囲を小さくする
人数・拠点・業務を限る。熱心な担当者がいて、結果の出やすい所から始めると、社内に見せやすい。
相手の
相手の生のデータがそろっていないことは多い。見本のデータで動かせる環境を用意するなど、準備の負担をこちらで持つ。
費用の
無償か有償か、試しのあとの価格の目安はどのくらいか。仮でよいので、終わってからではなく始める前に伝える。
結果の
何を、何人で、どの期間で見るか。「好評でした」だけでは、相手の社内でも次の相手にも根拠にならない。
その先の道筋を示す
試しが終わったら、いつ、誰と、何を決めるか。社内の承認の段や、契約の形まで、見通しを共有しておく。
もうひとつ確かめておきたいのが、試しのやり方が、製品の良さと食い違っていないかです。たとえば「ほとんど手をかけずに使える」ことが売りなのに、試しでは相手にあれこれ操作してもらう設計になっていると、良さが伝わらないまま終わります。試しで相手に何を感じてもらいたいのかから逆に考えて、試しの中身を決めます。
協力してもらう見返りをどうするかは、事業によって答えが違います。どんな形にするとしても、終わってから決めると揉めやすいので、始める前に言葉にして合意しておくことだけは共通です。試しの結果を事例として紹介してよいかも、この時点で確かめておくと、2社目以降に進めやすくなります。
試しで終わらせない。ゴールは「よかった」ではなく内諾
試しの導入で一番多い失敗は、試しまでは進むのに、そこで止まることです。無料の試しは引き受けてもらいやすい一方で、終わったあとに「よかったです」と言われて、それきりになりがちです。試しの目的は、使ってもらうことではなく、「この条件なら進めます」という内諾をもらうことです。そのために、試しの前・間・終わりでやることを決めておきます。
始める前
終わりの
試しが終わる日に、結果を見て話す場をあらかじめ予約しておく。できれば決める立場の方にも入ってもらう
試しの間
使って
渡しただけでは使われないことが多い。使い方の確認や、短い報告と一言を定期的に送り、感想を集める
終わるとき
「進めますか」まで聞く
決める立場の方に、進めるかどうかを聞く。進まないなら、何があれば、いくらなら進めるかまで聞く
渡したまま待っていると、相手は忙しさの中で使わないまま期間を終えてしまいます。また、「使ってみてどうでしたか」と最後に聞くだけでは、ふわっとした感想しか集まりません。使った結果を短くまとめて、一言の見立てを添えて定期的に送るだけでも、相手の受け止め方は変わります。
業界によっては、試しのあとにもう一段、社内の承認の場があります。現場の担当者が試しに前向きでも、委員会や上の方の承認を通らなければ導入には進みません。試しの結果を、担当者がその場でそのまま説明に使える形にして渡しておくことが、試しの先へ進む力になります。費用の通し方の考え方は「新規事業の営業費用を稟議で通す方法」にもまとめています。
製品がまだ完成していない段階でも、試しや申込みの意思をもらう進め方はあります。その場合も、できる見込みのない機能を「付きます」と約束しないことが前提です。目処が立っているものだけを約束します。
POINT
1社目を、2社目・3社目につなげる
1社目が決まったら、それを2社目・3社目への入口にします。取引先の紹介は、こちらからお願いしないと出てこないことがほとんどです。最初の1社は「その先に広がるか」で選び、入ったあとに広げる道筋を最初から持っておくのが基本です。広げる先は、大きく3つあります。
同業の他社
同じ業界・同じ規模の会社へ
「同じような会社で使われている」は、何よりの前例になる。導入先と業種・規模が近い会社から当てる
同じ
別の拠点・別の部署・グループ会社へ
1つの部署で入ったら、別の拠点や部署を紹介してもらう。会社の中で前例ができているぶん、話が早い
影響力のある先から
業界で見られている会社・団体へ
業界の中で影響力のある先に入ると、周りが追いかけて使い始めることがある。自治体では、先に入った所を見て、ほかの所がまねることもある
広げるときに効くのは、1社目の結果を「どんな相手が、どんな困りごとで、なぜ導入したか」の形でまとめておくことです。売れる相手の特徴(業種・困りごと・導入した理由)がはっきりすれば、次に当てる営業リストの条件にそのまま使えます。導入先に「なぜ選んだか」を聞いておくと、次の相手への話の材料になります。
ただ、事例は相手の背中を少し押す材料にすぎません。事例の数を増やすことより、2社目・3社目でも同じ条件で導入が始まるかを確かめていくことが、事業として売れる形に近づく道です。3か月でどこまで確かめるかの区切り方は「新規事業の営業の立ち上げ方」にまとめています。
最初の導入先探しでよくある失敗
最初の導入先探しでつまずく所は、だいたい決まっています。始める前に、次の失敗に当てはまっていないかを確かめておきます。
| よくある失敗 | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 最初から |
全部断られると、 |
広く |
| 関係の |
引き受けてはくれるが、 |
関係の |
| 試しを |
使われないまま |
終わりの |
| 条件を |
終わった |
期間・ |
| 試しを |
追い |
終わりの |
| 決める |
現場は |
試しの |
とくに見落とされやすいのが、試しを増やしすぎる失敗です。受け止める側の手が足りないと、入口はにぎわっているのに、先で失速する状態になります。試しの候補を集める速さと、内諾まで追いかけられる数を、最初にそろえておきます。
うまくいった例・いかなかった例
ここからは、最初の導入先を探す中で、何をして、何が分かったかを紹介します。特定を避けるため、会社名や商材は伏せ、どんな取り組みだったかだけを書いています。
買い手の予算の枠と時期に合わせて、試しの形を決めた
状況
健康づくりに関わる団体に、新しいサービスを提案していた。新しい取り組みとして予算を取るには、時期が限られていた
やったこと
先方の担当者に、予算の取り方と決まる時期を聞いた。今ある委託の枠に入れれば「新しい事業」ではなく「委託先を1つ増やす」で話ができること、枠の外で少人数から試す形もあることが分かった
分かったこと
年内は体験の形で試してもらい、年明けに翌年度の予算につなげる進め方で合意できた。試しの形は、相手の予算の枠と時期に合わせると決まりやすい。熱心な担当者のいる所から試す案も、先方から出てきた
無料の試しを渡したまま待った
状況
業務向けのクラウドサービスで、無料で試せる期間を用意し、関心を持ってくれた会社に案内した
やったこと
試しの手続きを済ませて渡し、相手から感想が返ってくるのを待った
分かったこと
使い始めないまま期間が過ぎる会社が多く、人手が足りない職場では試す時期そのものが決まらなかった。試しは渡して終わりにせず、終わりの話し合いを先に予約し、相手の準備の手間をこちらで減らす設計が要る
2つの
まとめ:最初の1社は「選んで、設計して、つなげる」
最初の導入先は、偶然見つかるのを待つものではなく、選んで、設計して、次へつなげるものです。押さえるのは次の6つです。
最初の
- 最初の1社の目的は、売上より「売れることを示し、前例をつくること」。ゴールは1件で十分
- 困りごとの強さ・試す仕組み・予算の付きやすさ・広がる先を、外から確かめられる合図で見る
- 候補は絞りすぎずに広く当て、反応で順番を組み替える。呼ぶのは実際に使う現場や開発の担当
- 電話は「ご意見をいただく」形で入り、打診は本気で。初回の商談は試しへ進むことをゴールにする
- 期間・範囲・相手の手間・費用の扱い・結果の測り方・その先の道筋を、試しの前に決めておく
- 試しのゴールは内諾。終わりの話し合いを先に予約し、1社目の結果を2社目・3社目への入口にする
実績がないことは、新規事業の誰もが通る道です。だからこそ、最初の1社に「試す理由のある相手」を選び、試しを内諾までつながる形で設計することが、事業の評価を変える一歩になります。
よくある質問
新規事業の試しの導入は、無料にしたほうが引き受けてもらいやすいですか?
試しの導入をお願いするのは、相手のどの部署がよいですか?
試しの導入は好評だったのに、導入が決まりません。どうすればよいですか?
新規事業の営業の立ち上げを外に任せる場合の進め方は「新規事業の立ち上げ支援」にまとめています。
新規事業の「売れるか」を確かめたい方は 新規事業立上支援事業の詳細はこちら
このような状況でしたら、
ぜひセグロスにご相談ください
- 新規事業で、最初の導入先や試しに協力してくれる会社を見つけたい
- 実績がなく、「どこで使われていますか」で話が止まってしまう
- 試しの導入まではいくのに、導入の決定に進まない
- 製品が完成する前に、使ってくれそうな会社の反応を確かめたい
- 外注したいが、本当に結果が出るのか・情報の扱いは大丈夫か不安
(外に任せるべきか、自社で直すべきかも含めて整理します)