新規事業の営業を専門家に任せる理由|営業の経験がない担当者の方へ

新規事業の営業を専門家に任せる理由 営業の経験がない担当者の方へ

この記事でわかること

  • 営業の経験がないと、見立てが現場とずれやすい理由
  • 冷たい対応をされる前の入り方に、引き出しが要る理由
  • 聞き取りや質問票の答えを、そのまま信じない方がよい理由と、任せたあとの関わり方

このコラムは、次のような方に向けて書いています。

「新規事業の担当になったが、営業の経験がない」
「販売の企画や宣伝は分かるが、営業をどう進めればよいか分からない」
「自分たちで営業してみるか、専門家に任せるかで迷っている」

新規事業の担当になる方は、営業の出身とは限りません。研究の出身の方や、販売の企画・宣伝・事業の企画など、別の分野を専門にしてきた方も多いはずです。

新規事業がまだ開発の段階にあり、そこから営業に近い動きを始めることもよくあります。開発部門や新規事業を生み出す部署が、そのまま営業まで担っていて、自社の営業担当がまだ付いていない、という場合です。もともと別の仕事をしていた人が集められて動き始める形や、営業をしたことのない担当者が1人で任されている形も珍しくありません。自分の分野の知見はあっても、営業の知見は別のものです。

先に結論を書きます。新規事業の営業は、まず営業の専門家に任せた方がよいです。営業の経験がないと、計画の見立てが営業の現場とずれやすく、相手から冷たい対応をされる前の入り方にも、引き出しが少なくなります。また、話を聞きやすい形で集めた意見ほど、当たり障りのない答えになりやすく、それを信じて進めると、本格的に広げたときに売れないことがあります。

この記事では、営業の経験がない担当者がつまずきやすい所と、専門家に任せたあとの関わり方までをまとめます。3か月で「売れるか」を確かめる進め方そのものは「新規事業の営業の立ち上げ方」に書いているので、あわせて読んでみてください。

営業の経験がないと、見立てが現場とずれやすい

「こう聞けば答えてくれる」と、単純に組み立ててしまう

営業の経験がないと、計画の段階で、アポ率や話を聞ける数が実際にどれくらい取れそうか分からないまま、見積もってしまいがちです。「こう質問すれば、当然答えが返ってくる」という前提で組み立ててしまうためです。

実際の営業は、そこまで単純ではない

相手にとって得にならないことには、答えたくないのが普通です。また、思っているよりも多くの数に当たらないと、役に立つ意見は集まりません。見立てと営業の現場が離れたまま進めると、計画どおりに数が積み上がらず、途中で計画を立て直すことになります。

電話をかけてから意見が集まるまでには、いくつもの段があります。どの段でも数が減っていくので、最後に残る「話を聞かせてもらえた相手」は、かけた数よりずっと少なくなります。

電話をかける
営業リストの相手に電話をかける。ここが計画の出発点になる
つながる
番号が違う、出ない、時間が合わないなどで、まず数が減る
担当者に届く
受付で止まる、担当者が不在、部署が違う。ここでも大きく減る
話を聞ける
担当者と話せても、忙しい、興味がないと断られる。時間をもらえるのはその一部
意見が集まる
話を聞けた相手の中で、事業の判断に使える本音まで話してくれる人は、さらに限られる
比べる点 営業の経験がない見立て 営業の現場を知っている見立て
質問への答え 聞けば、答えてもらえる 相手に得がなければ、答えてもらえない
当たる数 少し当たれば、意見が集まる 思っているより多く当たらないと、役に立つ意見は集まらない
アポ率・話を聞ける数 実際にどれくらい取れそうか分からないまま見積もる 現場に合った低めの数字で、計画を立てられる

数が足りないまま出した結論は、社内でも通りにくくなります。新しい方向を経営に提案しようとしたとき、数十件聞いただけでは「それは本当なのか」と言われてしまう、という声も実際にあります。見立ての段階で、どれくらいの数に当たる前提にするかを、営業の現場を知る人と一緒に決めておくことが大切です。

POINT

営業の経験がないと、「聞けば答えてくれる」前提で計画を組みやすい。
現場を知っていれば、低めの現実的な数字で計画を立てられる。

冷たい対応をされる前の入り方に、引き出しが要る

新規事業の営業では、相手はまだ商材を知らない

新規事業の営業では、相手はこちらの会社も商材も知りません。忙しいところに連絡するため、そっけない対応をされることもあります。

大事なのは、冷たくされる前にどう入るか

冷たい対応をされてから考えるのでは遅く、そうされる前に、どう話を切り出すかが大事になります。相手や場面に合わせた入り方の引き出しは、営業の経験の中で増えていくものです。営業の経験がないと、この引き出しが少なくなりがちです。

比べる点 営業の経験がない場合 営業の専門家の場合
入り方 用意した話し方を、どの相手にも同じように使う 相手や場面に合わせて、入り方を使い分ける
そっけない対応 されてから、どうすればよいかを考える される前に、どう入るかを考えておく

入り方の引き出しの例

引き出しといっても、特別な話術のことではありません。何から話し始めるか、受付で何と伝えるかといった、小さな選び方の積み重ねです。新規事業の電話でよく使う入り方を、比べて並べます。

NG 機能の説明から入る

どんな機能があるかを先に並べる。相手はまだ商材を知らないので、自分に関係のある話だと思えず、途中で切られやすい

OK 相手の仕事がどう変わるかから入る

「事務の手間が減って、本来の仕事に使える時間が増える」のように、相手の得を先に伝える。機能の説明は、そのあとでよい

NG 受付で「ご担当の方を」とだけ頼む

受付はどこにつないでよいか分からず、「どういったご用件でしょうか」で止まりやすい

OK ほかの会社で担当している部署の名前を伝える

「ほかの会社では、〇〇の部署の方にお話を伺っています」と伝えると、受付が取り次ぐ先を決めやすくなる

まだ実績のない新規事業なら、「何か買ってください、というお話ではなく、ご意見を伺いたい」という形で入ると、話を聞いてもらいやすくなります。ただし「営業ではありません」と言い添えるのは、あとで提案に進んだときにうそになるのでやめます。入口は軽くしても、会っていただく打診は本気で取りにいきます。電話での頼み方の言い回しは「新規事業の最初の導入先の探し方」に例をまとめています。

POINT

新規事業の営業では、そっけない対応をされることがある。
される前の入り方の引き出しは、営業の経験の中で増えていく。

聞き取りや質問票の答えを、そのまま信じない

話を聞きやすい形にすると、答えてもらいやすくなる

新規事業では、営業ではなく、話を聞かせてもらう場(聞き取り)や質問票の形で、相手の意見を集めることがあります。この形にすると相手の構えが解け、答えてもらいやすくなるのは事実です。

ただし、当たり障りのない答えが返ってきやすい

特に日本では、相手に気を遣った、当たり障りのない答えが返ってきやすいです。「現場では必要とされていない」のような、否定的な本音は上がってこないことが多くあります。

その答えを信じて進めると、本格的に広げたときに売れない

当たり障りのない答えを信じて事業を進めると、本格的に広げたときに売れない、ということが起きます。市場に受け入れられる形が、まだ固まっていなかったということです。

返ってきやすい答え 上がってきにくい答え
相手に気を遣った、当たり障りのない答え 「現場では必要とされていない」のような、否定的な本音
そのまま信じると、本格的に広げたときに売れないことがある 事業の進め方を決めるうえで、本当に知りたい答え

入口の形はそのままでよい。変えるのは、聞く中身と受け止め方

誤解のないように書いておくと、「ご意見を伺いたい」という入口そのものが悪いわけではありません。実績のない新規事業では、むしろ話を聞いてもらうための大事な入口です。当たり障りのない答えになるのは、入口の形のせいではなく、「この機能があったら使いたいですか」と感想を聞いてしまうことと、返ってきた「いいですね」をそのまま信じてしまうことにあります。

そこで、入口は「ご意見をいただく」形のままでも、聞く中身は「今どうしているか」「何なら買うか」にします。さらに、仮の価格や条件を置いて、相手が買う前提で考える話まで進めると、否定的な本音も出てきます。電話と商談での聞き方の手順は「新規事業の需要の確かめ方」に、断られた理由の分け方は「新規事業テストマーケティングのやり方」に詳しく書いています。

答えをそのまま信じないための決めごと

「これ欲しいですよね」と聞かない

答えを誘う聞き方では、相手は気を遣って「はい」と答える。うなずいてもらえた数は、買ってもらえる数ではない。

決める立場の人の声かを分ける

使うだけの人の「あったらいいね」と、お金を出して決める人の「これなら買う」は別のもの。誰が、どんな立場で言ったかと一緒に残す。

1件だけの強い声で決めない

目立つ声が1件あっても、そこに手を打つと外れることがある。同じ声が何件重なったかで見る。

ぼんやりした答えは、本物かを分けて見る

中身のはっきりしない断りや、夢のように大きな意見は、そのまま判断に使わない。実際に声を聞いた人が、本物かどうかを分けて伝える。

POINT

話を聞きやすい形で集めた意見ほど、当たり障りのない答えになりやすい。
否定的な本音が上がっていないまま、事業を進めない。

だからこそ、まず営業の専門家に任せる

自分の分野の知見と、営業の知見は別のもの

販売の企画や事業の企画の知見があっても、営業の現場感は別のものです。見立て、入り方、本音の聞き出し方は、どれも営業の現場で身につくものです。新規事業の営業は、まず営業の専門家に任せた方が、現場とのずれを小さくして進められます。

任せること 任せることで変わること
見立て 当たる数やアポ率を、現場に合った低めの数字で見積もれる
入り方 冷たい対応をされる前に、相手に合わせた入り方ができる
意見の集め方 当たり障りのない答えだけでなく、否定的な本音まで集めやすくなる

任せるといっても、事業の中身まで外の人に預けるわけではありません。何を確かめたいのか、何が分かれば先へ進むのかを決めるのは、事業の担当者です。営業の専門家に任せるのは、相手に当たって声を集め、それを判断に使える形で返すところです。

POINT

見立て、入り方、本音の聞き出し方は、営業の現場で身につくもの。
新規事業の営業は、まず営業の専門家に任せる。

任せたあとも、担当者は営業から離れない

営業の専門家に任せたあと、担当者が営業から完全に離れてしまうと、集まった声の重みが社内に伝わらず、いずれ自分たちで売るときに一から覚え直すことになります。任せる範囲を決めたうえで、担当者は次のように関わると、営業の知見が少しずつ社内に残ります。

毎週の定例では、数だけでなく、電話で聞けた生の声と、話し方や狙う相手をどう変えたか、その結果どうなったかを受け取ります。どこを変えて何が起きたかが残っていれば、それ自体が担当者にとっての営業の教科書になります。

専門的な質問への答えは、事業の担当者の出番です。商談で技術や仕組みの細かい質問が出たら、その場で答えられなければ預かり、担当者から答えるようにしておきます。営業の経験がなくても、自分の分野の知見は、ここで大きな武器になります。

うまくいった例・いかなかった例

ここからは、営業の経験が少ない新規事業で、実際に当てて確かめた例を紹介します。特定を避けるため、会社名と商材の中身は伏せ、何をして何が分かったかだけを書いています。

うまくいった例

自社で1年ほど営業しても進まなかった、専門職向けのサービス

状況

専門職の方の事務作業を減らすサービスで、1年ほど自社で営業してきたが、新しい相手が増えなかった。どんな相手に、どんな価値が響くのかが見えていなかった

やったこと

公開されている情報から、相手の分野と規模で順番を付けた営業リストを作って当てた。機能の説明より、事務作業が減って本来の仕事の時間を取れるという、相手の仕事の得から話した。規模で困りごとの感じ方が違うと分かってからは、狙う相手を抜き出し直した

分かったこと

どの分野の、どんな規模の相手に響くのか、具体的な答えが出た。自社だけで続けていたときには見えなかった狙う相手が、数を当てて反応を分けて見ることで定まった

いかなかった例

相手の声を確かめないまま、外に売り出すと決めた

状況

業務向けの新しいサービスで、前の版は、使う側に話を聞かないまま、外に売り出すと決めて進めていた

やったこと

前の版はうまくいかず、作り直すことになった。そこで、書類の種類ごとに本当に必要とされているかを電話で確かめる進め方に切り替え、相手が今どうしているか、費用がどう決まっているかを聞いていった

分かったこと

見立てを相手の声で確かめないまま進めると、作り直しの手間が大きくなる。また、方向を変える根拠として経営に出すには、数十件の聞き取りでは足りず、筋の通った量が要ると分かった

2つの例から言えること

どちらも、分かれ目は担当者の頑張りではなく、見立てを、実際に当てた数と相手の声で確かめたかどうかでした。営業の経験がないこと自体が問題なのではなく、確かめないまま進めることが問題です。

まとめ:新規事業の営業は、まず営業の専門家に任せることで、現場とのずれを防げます

営業の経験がないと、「聞けば答えてくれる」前提で計画を組みやすく、アポ率や話を聞ける数を、実際にどれくらい取れそうか分からないまま見積もりがちです。冷たい対応をされる前の入り方にも、引き出しが少なくなります。また、聞き取りや質問票で集めた当たり障りのない答えを信じて進めると、本格的に広げたときに売れないことがあります。新規事業の営業は、まず営業の専門家に任せてください。

新規事業の営業を始めるときに押さえること

  • 自分の分野の知見と、営業の知見は別のもの
  • 相手に得がなければ、聞いても答えは返ってこない
  • 役に立つ意見は、思っているより多く当たらないと集まらない
  • 冷たい対応をされる前の入り方に、引き出しが要る
  • 当たり障りのない答えを信じて、事業を進めない
  • 入口は「ご意見をいただく」形でもよい。聞く中身を「今どうしているか、何なら買うか」にする
  • 任せたあとも、商談に同席して肌感覚をつかみ、型ができたら自社で回す

よくある質問

販売の企画や宣伝の経験があれば、営業も自分でできませんか?
その知見は、営業でも役に立ちます。ただ、相手にどう入るか、どこまで答えてもらえるかといった営業の現場感は、営業の経験の中で身につくものです。まずは営業の専門家に任せた方が、見立てのずれを小さくできます。
聞き取りや質問票で集めた意見は、使えないのですか?
使えないわけではありません。ただ、当たり障りのない答えが多くなりやすいので、否定的な本音が上がっているかを確かめてから、事業の判断に使ってください。
どれくらいの数に当たればよいですか?
商材や相手によって変わります。ただ、営業の経験がないと、実際にどれくらい当たる必要があるか分からないまま、見積もりがちです。思っているよりも多く当たる前提で、営業の専門家と一緒に見立てを作ってください。
営業の専門家に任せると、社内に営業の知見が残らないのでは?
初めのうちは事業の担当者が商談に同席し、毎週の定例で数と生の声、話し方や狙う相手をどう変えたかを受け取ります。話す台本・営業リスト・記録を受け取っておけば、型ができたあとに自社で回せます。

業界ごとの支援事例は「業界別の支援実績」にまとめています。

このような状況でしたら、

ぜひセグロスにご相談ください

  • 新規事業の担当になったが、営業の経験がない
  • 営業の計画を立てたが、見立てが合っているか分からない
  • 相手に冷たく対応されて、話を聞いてもらえない
  • 聞き取りや質問票の答えを、どこまで信じてよいか分からない
  • 新規事業の営業を、専門家に任せたい
まずは現状を伺い、「どこで詰まっているか」と「次の一手」を整理します。

(外に任せるべきか、自社で直すべきかも含めて整理します)