この記事でわかること
- 半導体・電子部品・電池の業界を「装置・部品・機器」の3つの層で見ると、電話の相手が決まる理由
- 部品が設計に採用されるまでの流れと、電話で聞くこと・持ち帰ることの線引き
- 数の限られた装置メーカーへの当て方、「自社で作っている」への返し方、電池の相手の広げ方
このコラムは、次のような方に向けて書いています。
「展示会で半導体の会社と名刺を交換しても、その方が製造や品質の担当で、話が設計まで届きません」
「半導体の装置メーカーは数が少なく、一通りかけたら営業リストが終わってしまいました」
「新しい電池を売りたいのですが、どの業界のどの部署が使ってくれるのか見当が付きません」
半導体・電子部品・電池の業界は、いま投資が大きく動いている業界です。新しい工場や装置への投資が続き、部品・材料・加工・装置まわりの仕事を求める会社が増えています。
ところが、この業界に新しく電話で入るのは簡単ではありません。大手が多く、受付で止まりやすい。部品は「良さそうだから買う」ではなく、設計に採用されて初めて売れる。そして、話を聞いてくれる人と、物を選ぶ人と、お金を出す人が、別の部署にいることがよくあります。
この記事は、半導体・電子部品・電池のメーカーや、その装置メーカー、部品を組み込む機器メーカーに、部品・材料・加工・仕組みを売る会社に向けて、業界の層の見方と、採用までの流れに沿った電話の組み立て方をまとめます。製造業全体への電話の基本は「製造業向けのテレアポ攻略法」にまとめているので、あわせて読んでみてください。
前提:装置・部品・機器の3つの層と、大きな投資の波
半導体の投資は、いま大きな波の中にあります。日本の会社が作る半導体の製造装置の販売高は、2026年度に6兆5,502億円と、前の年度より26%増える見込みです。世界の半導体の販売高も、2026年は1兆5,112億ドルと、前の年の2倍近くに届く見込みとされています(世界半導体市場統計の2026年6月の発表)。
出どころ:日本半導体製造装置協会「半導体・FPD製造装置 需要予測(2026年度〜2028年度)」、2026年7月2日発表。どちらも見込みの数字です。
投資が大きいほど、装置を作る会社、部品を作る会社、それを組み込む会社のそれぞれで、外から買う物や頼む仕事が増えます。ただ、この業界の会社は、同じ「半導体・電子部品」でも層によって買う物も選ぶ人も違います。電話の前に、相手がどの層にいるかを決めます。
装置をつくるメーカー
半導体や電池の製造装置を作る会社
部品・加工・組み立てを外の協力会社に頼む。装置開発・生産技術・購買が窓口
部品・電池をつくるメーカー
半導体・部品・電池を作る会社
装置・材料・検査などを買う。工場の設備と、製品の開発の両方に話がある
機器をつくるメーカー
部品を組み込んで製品を作る会社
部品を選んで設計に組み込む。選ぶのは設計・開発の担当
たとえば部品を売る会社にとっては、右の「機器をつくるメーカー」の設計者がお客様です。部品を作るための装置や加工を売る会社なら、真ん中の「部品・電池をつくるメーカー」や、左の「装置をつくるメーカー」がお客様になります。自社の商材が、この流れのどの矢印の上で売られるのかを先に決めると、営業リストの範囲と、呼ぶ部署が決まります。
POINT
半導体・電子部品・電池は、装置・部品・機器の3つの層がつながった業界です。相手の層が決まれば、選ぶ人と、話す中身が決まります。
部品は設計に採用されて売れる。電話は採用までの流れの入口
部品や材料は、相手の会社の設計に採用されて、初めて継続して売れます。話をして気に入ってもらっても、その場で買ってもらえるわけではありません。電子部品の会社では、次の流れで進むのがふつうです。
話を聞く
どの機器の、どこに使う部品か。今の設計で困っていることや、新しい設計の予定を聞く
見本を出す
条件に合いそうな製品を選び、「これで試してみてください」と見本を渡す
評価を受ける
相手の設計の中で試してもらう。打ち合わせは一度では終わらず、何度か重ねる
採用される
設計に組み込まれ、量産に入る。ここで初めて、継続した売上になる
電話でやるのは、この流れの入口です。電話の目的は、話を聞く場をつくることで、技術の説明で勝つことではありません。そのうえで、入口の時点で聞いておくと後が楽になる項目があります。部品なら、用途(どの機器のどこに使うか)、大きさや性能の目安、設計や量産の時期、使う量、決める方、今の調達先です。ここまで分かれば、提案の入口には立てます。
反対に、細かい使用条件や性能の限界のような踏み込んだ話は、技術の分かる人でも答えが分かれるところです。電話の場で答えず、持ち帰って、技術の分かる人が同席する商談につなぎます。どこまで聞いてどこから持ち帰るかは「技術の分かる営業がいないとき」でも書いています。
入口で聞いたことは、相手を3つに分けて残します。今すぐ話を進められる相手、関心はあるが設計や予算の時期がまだ先の相手、そもそも合わない相手です。時期待ちの相手には次に連絡する時期を決めておき、合わなかった相手も「物理的に合わない・相手の都合・時期」のどれだったかを記録します。設計の時期が来たら、その記録から相手がもう一度浮かび上がるようにしておくためです。
選ぶのは設計・開発。名刺の人や作る会社だけで終わらせない
部品を選ぶのは、相手の会社の設計・開発の担当です。ところが、展示会で名刺を交換した相手が、製造部や品質管理の担当であることはよくあります。品質管理の担当にいくら説明しても、部品は設計に入りません。名刺の人は入口として、設計・開発の担当につなぎ直してもらうのが基本です。
大手の電子部品メーカーでは、展示会を運営する部署、技術的な支援をする部署、開発の部署が別々になっていることもあります。窓口になった部署と、実際に動く部署が違うのです。展示会の名刺の追い方そのものは「展示会の費用対効果を最大化する架電設計」にまとめています。
NG 展示会で会った相手に
名刺の人が製造部や品質管理の担当でも、そのまま製品の説明を続ける。部品を選ぶ人に話が届かない
OK 展示会で会った相手に
「この件は、設計や開発ではどちらのご担当ですか」と聞き、名刺の人の名前を添えて当て直す
NG 営業リストを作るとき
部品を作る会社だけを並べる。実際には、組み込む会社や設置する会社が選んでいることがある
OK 営業リストを作るとき
誰が部品を選ぶかから考える。作る会社に加え、組み込む会社・設置や工事をする会社も候補に入れる
「誰が選ぶか」は、業界の形によって変わります。機器を作る会社とは別に、組み込みや設置を請け負う会社が部品を選んでいることもあります。作る会社だけを営業リストに並べると、選ぶ人のいる会社がまるごと抜け落ちます。
もうひとつ、設計の採用は、会社単位ではなく設計の担当や機種ごとに決まります。一度話が進んだ会社にも、別の機種を受け持つ設計の担当がいます。同じ会社だからもう終わり、ではありません。会社の中の広げ方は「製造業の失注先の掘り起こし方と既存客の広げ方」にまとめています。
装置メーカーは数が限られる。営業リストを使い切らずに育てる
半導体の製造装置を作るメーカーは、数が限られています。部品・加工・組み立てを協力会社に頼む仕事が多い一方で、営業リストに並ぶ会社の数は多くありません。上から順にかけて一通り終わったら、それで営業リストが尽きてしまいます。
この業界では、別の工場への取り次ぎや、担当者の不在がとても多く起きます。それを「つながらなかった」で終わらせず、転送された先、拠点、次に話すきっかけを記録して、同じ会社の中で接点を増やしていくことで、限られた営業リストを使い続けられます。
装置メーカーに当てるときの決めごと
転送先を残す
「別の工場の担当です」と言われたら、その工場の名前・番号・部署を聞いて記録する。次はそこへ直接かける。
部署を分けて当てる
装置開発・生産技術・購買は、それぞれ別の入口。ひとつで断られても、ほかの部署に当てる。
次につなぐ質問を持つ
今の外注の方針、頼みたい加工や組み立ての範囲、協力会社を選ぶ基準。答えが次の電話の材料になる。
装置と工場を分ける
装置をつくるメーカーと、工場を持つメーカーは、困りごとも窓口も違う。営業リストを分けて回す。
協力会社を探す側の事情も、ここ数年で変わってきています。電話の中では、「協力会社の廃業が増えている」「簡単で量の多い仕事は海外に流れ、難しくて少量の仕事が国内に残る」「海外の工場から国内の工場に戻す流れがある」といった声が聞かれました。国内の品質、円安による費用の差、海外の物流の不安が理由です。少量でも引き受けてくれる国内の会社を探し始めたという相手には、加工や組み立ての話が届きやすくなります。
半導体の装置メーカーだからといって、特別な断りが多いわけではありません。最終の装置メーカーに加えて、部品を作るメーカーや受託で作る会社からも、同じように話が聞けています。加工や試作の仕事を取りにいく電話の組み立ては「受託加工・試作の仕事を取る新規開拓」にまとめています。
「自社で作っている」には、入れ替えの時期と開発の手間で返す
部品や組み込み用の機器を売るとき、機器メーカーからよく返ってくるのが「その部分は自社で作っているので」「取引先のものを使っているので」という断りです。すでにやっている相手に、製品の良さを並べても、なかなか動いてもらえません。
ここで効くのは、相手が自社で作っていることの手間と時期に目を向けることです。自社で作り続けるには、機種が変わるたびに開発や評価の手間がかかります。外から部品として買えば、その手間の一部を減らせることがあります。そして、その話がいちばん響くのは、機器の入れ替えや次の機種の設計を考える時期です。
「自社で作っている」と言われたときの返し方の例
「もちろん、今すぐ切り替えていただくお話ではありません。次に機種を入れ替えられるときの選択肢の一つとして、開発や評価にかかる手間を減らせるか、費用の面も含めて情報交換させていただけないでしょうか」
この返し方のこつは、利点を電話で言い切らないことです。電話では「開発の手間が減る」と一言だけ伝え、細かい比べ方は商談で見せます。断られたときに押し返すのではなく、話を「情報交換」くらいの軽さにして、入れ替えの時期まで接点を残すと、相手も受けやすくなります。
ただし、仕様が合わなければ採用はされません。商談が進んでから仕様の違いで見送りになると、お互いの時間が無駄になります。電話の段階で大きさや性能の目安を聞いておくのは、こうした空振りを防ぐためでもあります。
新しい電池や材料は、使い道から相手の業界を広げる
新しい電池や材料のように使い道の広い商材は、最初から「どの業界のどの部署が使うか」が見えていることはまずありません。だからこそ、使い道から相手の業界を広げ、反応を見ながら絞る進め方が合います。
はじめ
広く当てる
すぐ思いつく業界に限らず、関わりそうな製造業まで広げ、研究開発・技術企画・新規事業に分けて当てる
反応を見て
見立てを直す
反応の良い業界と部署に寄せる。製品の説明に寄りすぎず、相手が何に困り、どんな技術に関心があるかを聞く
話が深まったら
試しの相談へ
情報交換で終わらせず、試しに使ってみる検討を前提にした相談につなげる
こうした商材の電話で大切なのは、製品の説明から入らないことです。容量・大きさ・値段・技術の条件といった話は、相手の使い道が見えてから意味を持ちます。最初は、相手がどんな場面で電池に困っているか、どんな技術に関心を持っているかを聞くことに時間を使います。
相手の部署も、工場ではなく研究開発・技術企画・新規事業が中心になります。これらの部署は、すぐに買う予定がなくても、新しい技術の情報を集めることには前向きです。研究開発の部署は、番号が公開されていることも多く、入口にしやすい相手です。
新しい電池のように市場がまだできていない商材では、アポの数だけを追うと、話を聞くだけで終わる相手ばかりが増えます。「検討する側になり得る相手」かどうかを見極め、反応のたびに業界と部署の見立てを直していくこと自体が、その商材の市場を確かめる作業になります。売る物を決める前の確かめ方は「研究開発・設計部門への営業方法」でも触れています。
大手は受付で止まる。部署の番号と、工程で分けた営業リストで入る
半導体や電池の大手は、断られる前に、受付で止まることがとても多い相手です。同じ製造業でも、古くからの業界の会社と比べて、断られる割合より受付で止まる割合の方が目立って高くなります。業界の問題というより、大きな会社が多いという規模の問題です。
入れない相手には、名指しできる宛先を作って入ります。
大手の社外へのメールは、相手の側の守りで届かないことがあります。特に添付のあるメールは、送ったつもりで届いていないことも少なくありません。資料を送ったら、数日のうちに電話でも確かめます。
もうひとつ、大手に当てるときは、営業リストの区切り方も見直します。「半導体・電子部品の会社」とひとくくりにして、どの部署にも同じ話をすると、受付で止まるか、つながっても「間に合っています」で終わりがちです。製造・組み立て・検査・生産管理・品質保証のように、相手の工程と部署で区切り、それぞれの工程で起きている困りごとに合わせて話を分けると、担当者に届く話になります。
POINT
大手が「刺さらない」のではなく「入れない」だけのことはよくあります。代表番号であきらめず、部署の番号・工場の番号・担当者の名前と、入口を変えながら当てます。
うまくいった例・いかなかった例
ここからは、半導体・電子部品・電池に関わる会社への電話で、何をして、何が分かったかを紹介します。特定を避けるため、会社名は伏せ、どんな電話だったかだけを書いています。
うまくいった例
半導体の装置メーカーに、加工・組み立ての受託を案内した
状況
相手になる半導体の装置メーカーは数が限られていた。別の工場への取り次ぎや担当者の不在も多く、そのままでは営業リストがすぐ尽きる状態だった
やったこと
装置開発・生産技術・購買の部署を想定して営業リストを作り、最初の電話から「今の外注の方針」「頼みたい加工や組み立ての範囲」「協力会社を選ぶ基準」を聞いた。転送先・拠点・次に話すきっかけを記録し、同じ会社の中で接点を増やした
分かったこと
転送や不在が多くても、記録が整理されていれば次の打ち手がはっきりする。限られた営業リストでも打ち尽くさず、同じやり方を続けられるようになった
うまくいった例
開発中の新しい電池の、使い手を探した
状況
どの業界・どの部署と最初に話すべきかが決まっておらず、試しに使ってくれる相手を探していた
やったこと
すぐ思いつく業界だけでなく、関わりのありそうな製造業まで対象を広げ、研究開発・技術企画・新規事業の部署ごとに見立てを作った。電話では製品の説明に寄りすぎず、相手の困りごとと技術への関心を聞き、反応に合わせて見立てを直した
分かったこと
大手の製造業と話す機会が生まれ、情報交換で終わらず、試しに使う検討を前提にした相談に進む相手も出てきた。使い道の広い商材ほど、相手を先に決めつけず、反応で絞る方が早い
いかなかった例
半導体・電子部品の会社に、工程を分けずに広く案内した
状況
工場の人手に関わるサービスを、半導体・電子部品の会社に案内していた
やったこと
「半導体・電子部品の会社」とひとくくりにした営業リストに、同じ話で電話をかけた
分かったこと
受付で止まるか、「間に合っています」で終わることが多く、商談になっても中身がそろわなかった。製造・組み立て・検査・生産管理・品質保証と工程で営業リストを作り直し、増員・工程の立ち上げなど困りごとごとに話を分けると、要件の整理された状態で商談を渡せるようになった
3つの例から言えること
どれも、話し方を磨く前に「採用までの流れの、どこにいる、どの部署の誰に当てるか」を決め直しています。この業界では、相手の層と部署が合えば、話は聞いてもらえます。
まとめ:採用までの流れの、どこに電話をかけるのかを決めます
半導体・電子部品・電池の営業は、層が多く、採用までに時間がかかり、大手の受付も固い業界です。押さえるのは次の6つです。
半導体・電子部品・電池への電話で押さえること
- 相手が装置・部品・機器のどの層にいるかを決め、営業リストの範囲を決める
- 部品は設計に採用されて売れる。電話は話を聞く場をつくる入口と考える
- 用途・大きさや性能の目安・時期は聞き、踏み込んだ技術の話は持ち帰る
- 選ぶのは設計・開発。名刺の人や作る会社だけで終わらせず、別の設計の担当にも当てる
- 数の限られた装置メーカーは、転送先と拠点を記録して、同じ会社の中で広げる
- 新しい電池や材料のような使い道の広い商材は、業界を広げてから反応で絞る
投資の大きな波が来ている今こそ、相手の層と採用までの流れを決めてから電話をかけることで、話を聞いてくれる相手は確実に増えていきます。
よくある質問
半導体・電子部品メーカーへの営業は、誰に電話すればよいですか?
売る物によって変わります。部品なら、それを組み込む機器メーカーの設計・開発の担当です。部品を作るための装置や加工なら、部品メーカーや装置メーカーの生産技術・装置開発・購買が窓口になります。展示会で会った相手が製造や品質の担当なら、設計・開発の担当につなぎ直してもらいます。
電子部品の営業で、電話ではどこまで技術の話を聞けばよいですか?
用途(どの機器のどこに使うか)、大きさや性能の目安、設計や量産の時期、使う量、決める方、今の調達先までが目安です。細かい使用条件のような踏み込んだ話は、その場で答えずに持ち帰り、技術の分かる人が同席する商談につなぎます。電話の目的は話を聞く場をつくることで、技術の説明で勝つことではありません。
半導体の装置メーカーは数が少なく、営業リストがすぐ尽きます。どうすればよいですか?
一度かけて終わりにせず、転送された先・拠点・次に話すきっかけを記録して、同じ会社の中で接点を増やします。装置開発・生産技術・購買は別の入口なので、ひとつで断られてもほかの部署に当てます。今の外注の方針や協力会社を選ぶ基準を聞いておくと、次の電話の材料になります。
製造業での支援事例は「製造業の営業代行実績」にまとめています。
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